経営資源の論点

このエントリーでは、経営資源の論点、すなわち、「ビジネスのどんな局面で、どのように経営資源を考えることになるか」を学びましょう。

なお、このエントリーでは経営資源という言葉の定義や分類は説明しません。先に以下のエントリーを読んでおいてください。

せっかく経営資源の分類を覚えたので、それの使い道もセットで覚えようということです。では始めていきましょう。

経営資源の論点

以下のスライドを見てください。マーケティングの流れと、そこに付随する経営資源の論点をまとめておきました。

経営資源の論点

このように、経営資源の論点は以下の2つに大別できます。

  1. コスト源としての経営資源:ある行動をしたい。コストを払えるだけの経営資源はあるか?
  2. 経営資源の強化・蓄積:解決策の実行を通じて、どの経営資源を、どのように強化・蓄積していくか?

では、順に説明します。

経営資源の論点①:コスト源としての経営資源

経営資源の論点①

まず、最も分かりやすく基本的なのはコスト源としての経営資源を考えることです。

以下のスライドを見てください。

コストとリソース

このように、何らかの行動をするときには、自分のリソースの中からコストを払わなければなりません。コストとリソースの関係については以下のリンクで詳しく解説しているので、スライドだけでピンと来ない人はリンクを読んでから先に進んでください。

上のスライドにおけるリソースとは、まさに経営資源のことです。そしてビジネスとは行動(解決策)の連続ですから、あらゆる局面で「その行動のコストを払えるだけのリソースがあるか?」という視点で経営資源を考えることになるわけです。これが、コスト源として経営資源を考えるということです。

いくつか、コスト源としての経営資源に関する代表的な論点を挙げておきます。

  • 何を、いくらで売るか?(プライシング)
    • その商品にはどれだけのコストがかかるか?
  • その解決策を実行するだけの経営資源があるか?
  • 経営資源がない場合、それでも解決策を実行するか?
    • (if yes) どのように経営資源を調達してくるか?

ビジネスでは、行動以外のことはほとんど考えません。つまり、上記の論点の他にも、あなたがビジネスで考えることになるあらゆる論点で、経営資源が何らかの形で関係してくると考えてください。

要するに、無い袖は振れないので、「袖があるか?」はどんな論点にもついてまわるということです。

応用:カネの調達と配分

コスト源としての経営資源を最もハイレベルな視座で捉えると、カネの調達と配分になります。以下のスライドを見てください。

ビジネスのフレームワーク

このように、ビジネスとはカネを循環させる活動です。資金調達をし、そのカネを何かに換えて問題解決を行い、投下したカネ以上の報酬を受け取るのがビジネスです。

なお、上のスライドに関しては、以下のエントリーを参考にしてください。

つまり、以下の2つの論点は、あらゆるビジネスの開始時点で考えざるを得ません。

  1. いくらのカネを、どうやって調達するか?
  2. カネを何に使うか?

①は、いわゆる資金調達です。金融業界の大きさを考えれば、その重要性は明らかでしょう。なお、スモールビジネスは人材さえいれば始められるので、あらゆるビジネスで資金調達が必要なわけではありません1

②は、新規事業に対するYes/Noであれば投資判断、既存事業も含めた全体のカネの割り当てなら予算(予算管理/予算配分)という呼び名になります。

投資判断とは、要するに「やるか/やらないか?」、つまり、「それにカネを使うか?」を考えることです。経営資源そのものですよね。投資判断に関しては、以下のエントリーでフレームワークを紹介していますので、こちらも確認しておいてください。

このレベルで考えるときには、経営資源とはカネのことです。もちろん、具体的な金額を出すために他の経営資源を積み上げることにはなりますが、フォーカスが当たるのはカネです。前回のエントリーでも述べたとおり、カネは別格の経営資源なのです。

経営資源の論点②:経営資源の強化・蓄積

経営資源の論点②

経営資源の2つめの論点は、強化・蓄積です。

先ほどの「①コスト源としての経営資源」とは、要するに「なくなる/減る」経営資源を考えることです。たとえば、カネは使えばなくなりますし、ヒトの時間も何かに投入すれば他のことには使えませんよね。

今度は逆です。「増える/強くなる/より便利になる」経営資源を考えるのです。

こちらは、コスト源としての経営資源ほど分かりやすくはないでしょう。順に説明します。

一部の経営資源は強化・蓄積できる

まず、一部の経営資源は、商品(解決策)の提供を通じて強化・蓄積できることを押さえてください。

もう一度、経営資源の分類を確認しましょう。

このうち、一部の経営資源は商品の提供を通じて強化・蓄積されます。最も分かりやすいのはヒトでしょう。ヒトは経験を通じて成長しますよね。また、ソフトウェアも、発売から時間が経つほどバグはなくなり、使い勝手がよくなるものです。

Point

一部の経営資源は、ビジネスを通じて強化・蓄積できる

なお、当然ながらカネも報酬として受け取るので、厳密にはカネも蓄積される経営資源の1つです。ただ、「ビジネスを通じて利益を出す」というのはあまりに当たり前のことで、「経営資源の強化・蓄積」の話に混ぜるとかえって分かりにくくなります。よって、ここから先はカネのことは考えません。注意してください。

つまり、ここでの論点を具体的に書くと、「商品の提供を通じて利益を出すこと(カネを蓄積すること)は当然として、それ以外の経営資源をどう強化・蓄積するか?」となります。

各経営資源に対する、強化・蓄積の視点

では、カネ以外のそれぞれの経営資源に関して、どのような強化・蓄積の視点があるのでしょう?

まず、ヒトの強化・蓄積、つまり、従業員の育成やリテンション(有能な人材に会社に居続けてもらうこと)が企業にとって一大事であることは言うまでもないでしょう。ここは「採用・育成・リテンション」というフレームワークがあるくらいです。

有体物に関しては、コスト源(生産要素)としての側面が強く、商品の提供を通じて強化・蓄積されることはあまりありません。料理人の包丁やキーボードのように、「使い込む」、「慣れる」ことによって効率性が上がるケースはありますが、わざわざ「このX(有体物)を、どのように強化するか?」といった論点として立てるようなケースはほとんどないでしょう。

無体物は、「強化・蓄積」という視点があるかが重要な経営資源です。

たとえば、データは「こういうデータを集めよう」と思っていないと集まりません。ソフトウェアも「スパゲッティコード(制作者以外が解読困難なコード)」という言葉があるくらいで、複数人による長期的な強化・蓄積の視点が欠けていると、保守・運用に関して大きなリスクを背負うことになります。

他にも、重要な技術やノウハウが特定のヒトに紐づいたままだと、企業としては大きなリスクを抱えていることになります。その人が転職しないとは限りませんし、何らかの事情で突然働けなくなる可能性もゼロではありません。そこで、ヒトに紐付いた技術やノウハウを、言語化された情報として管理することが求められるわけです。これがナレッジマネジメントと呼ばれるものですね。

最後に、知覚できない経営資源も、強化・蓄積の視点が重要です。「知覚できない」ということは、ブランドや文化といった経営資源は直接的に変化させることはできず、間接的な行動の積み上げでしか強化・蓄積できないことを意味します。つまり、明確なゴール意識を持って逆算から行動を設計しないと、これらの経営資源を強化・蓄積することはできないわけです。

以上、経営資源の論点を説明しました。次回は、経営資源としてのカネの特殊性について説明します。

また、マーケティング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。


  1. ただし、これはスモールビジネスにおいてはヒトがカネに優先するということを意味するわけではありません。結局のところ、カネがなければどんな人も生活できないからです。資金調達せずにヒトだけで始まるビジネスでは、初期のカネの出所が個人の貯金になっているだけです。