経営資源の全体像【「ヒト・モノ・カネ・情報」はもう古い】

このエントリーでは、経営資源の全体像を学びましょう。経営資源はビジネスのあらゆる論点で顔を出すので、その分類を正しく理解しておくことが重要です。

早速始めていきましょう。

経営資源とは

まず、「経営資源」という言葉を明確にしましょう。辞書には以下のように書かれています。

けいえいしげん【経営資源】

企業が経営を行う上で利用できる有形あるいは無形の資源。人的資源・物的資源・資金力・情報・商標・信用などの総体をいう。

この定義でもいいのですが、少し分かりにくいですね。シンプルに言うと、経営資源とは、企業の有するすべての有用なモノのことです1。詳しくは後述しますが、ここでの「モノ」には情報や関係といったものも含まれます。

Keyword

経営資源:企業が所有しているすべての有用なモノ

経営資源とビジネス

経営資源は、ビジネスのすべての論点に顔を出します。それも当然で、経営資源とは要するにリソースのことですから、何らかの解決策を実行するときには経営資源を考えざるを得ません。ビジネスとは解決策の連続なので、必然的に経営資源を考え続けることになるわけです。

これが理由で、以下の「マーケティングのフレームワーク」のスライドでも、経営資源はフレームワークの一部ではなく、全体の土台として表現してあります。

マーケティングのフレームワーク

このように、経営資源はマーケティング(ビジネス)のあらゆる論点を支える土台です。フレームワークの一部として捉えるのではなく、常に考えるべきこととして意識してください(というか、意識せざるを得ません)。

なお、このスライドに関する詳しい解説は以下のエントリーで行っています。

経営資源の全体像

では、準備ができたので本題に入りましょう。経営資源の全体像を以下の表にまとめてあります2

経営資源の全体像

細かくて申し訳ないのですが、詳細な表を作成してみました。あらゆる経営資源を網羅したつもりです。

早速、順に見ていきましょう。といっても、すべてを詳細に説明していると終わらなくなってしまうので、以下の括りで説明していきます。まずは大きな分類の考え方を掴んでください。

  1. カネ
  2. ヒト(人的資源)
  3. 有体物
  4. 無体物
  5. 知覚できない経営資源

カネやヒトのような特に重要な経営資源に関しては、詳細は別エントリーで解説します。

経営資源①:カネ

1つめの経営資源は、カネです。カネの具体例は、現金、預金、金融資産などです。特に説明は不要でしょう。

カネは第一の経営資源であると同時に、別格の経営資源です。カネには「他の経営資源を調達できる」、「カネ自体が企業のゴールである」といった、他の経営資源にはない特性があり、経営資源の中で完全に浮いた存在になっています。この話は長くなるので、詳しくは別エントリーで解説します。

経営資源②:ヒト(人的資源)

2つめの経営資源は、ヒトです。ヒトとは、私たち自身や、私たちが持っている知識、スキル、ノウハウなどのことです。

なお、経営資源としてのヒトには人的資源というフォーマルな言い方もあるので、こちらもセットで覚えてください。

カネと同じく、ヒトも特殊な経営資源です。ヒトには「企業が自由にコントロールできない」、「成長する」といった、他の経営資源にはない特徴があり、ヒトという経営資源の管理だけでHRM(Human Resources Management)という分野を形成しています。この話も長くなるので、詳しくは別エントリーで解説します。

経営資源③:有体物

3つめの経営資源は、有体物です。言葉としては難しい印象を受けるかもしれませんが、単に物理的な実体を持つ「物」のことなので、難しく考えないでください。具体的には、以下のものです。

  • 不動産
    • 土地、建物
  • 動産
    • ハードウェア:パソコン、サーバー、ディスプレイなど
    • その他:車両、机、椅子など

カネとヒト以外の触れる物は、すべてこのカテゴリーに入ります。私たちが普段から使っているものばかりなので、難しいことはないでしょう。

経営資源④:無体物

4つめの経営資源は、無体物です。無体物とは先ほどの有体物の逆で、「知覚はできるが、触れないモノ」のことです。具体的には、知的財産と実績で構成されます。

知的財産

まずは知的財産から説明します。

知的財産の定義は日々変動しているので、ここでは明確に定義することは避けます。ざっくりしたイメージとしては、知的財産とは「使い道のある情報」だと考えてください3。具体的には以下のもののことなので、定義を考えるより、具体的な中身で覚えることがオススメです。

  • 産業財産権:特許、商標、意匠、実用新案
  • ソフトウェア:システム、アプリ、ウェブサイトなど
  • コンテンツ:書籍、映画、アニメ、楽曲など
  • データ:顧客のリスト、行動履歴など
    • ここでのデータとは、「人間が意図的に創作したとは言えない、有用な情報の集合」のことです
  • その他(ナレッジ):言語化された技術やノウハウ

なお、ソフトウェアが入ったDVDや印刷された書籍は有体物ですが、価値の源泉はそこに含まれる情報にあるので、このような分類になっています。

実績

次に、実績に関しては説明するまでもないでしょう。言葉どおりの意味です。具体的には、以下のようなものです。

  • 売上や利益
  • 顧客基盤
  • 取引実績
  • 解決策が実際に効果を発揮した事実

ざっと調べた限りでは実績を経営資源とする考え方は見当たらなかったのですが、実績が企業にとって重要な経営資源(有用なモノ)であることに議論の余地はありません。実績がブランドを形成するからです。ブランドに関しては後述しますが、要するに顧客からの信頼だと考えてください。

たとえば、私たちは歴史のある会社や売上が大きい会社を信用しやすいですよね。歴史や売上が信頼の裏付けになるからです。他にも、何か商品を売り込まれるときに実績を添えられると安心できます。PoC(Proof of Concept/概念実証)やテストマーケティングといった考え方も、実績があるのとないのでは大違いだという事実が根本にあります。

経営資源⑤:知覚できない経営資源

最後は、知覚できない経営資源です

ここまで説明してきた経営資源は、最低でも見ることができます。ソフトウェアのような無体物は触ることはできませんが、それでも見ることはできますよね。ここから説明するのは、見ることすらできない経営資源です。表を再掲しておくので、確認してください

経営資源の全体像

知覚できない経営資源は、大きく分けると関係能力です。ただし、個人に紐づく能力はヒトに含まれると考えるので、表のような分類になっています。

では、順に見ていきましょう。

関係

知覚できない1つめの経営資源は、関係です。私たちが他の人や企業とどれくらい深い関係にあるのかは、見ることも触ることもできませんよね。

これの代表がブランドです。先述のとおり、ブランドとは顧客や社会からの認知・信頼のことです。なお、「ブランド」というと単に「信頼を獲得している企業名/商品名」を意味することもありますが、ここでは違う意味で使っているので注意してください。

あなたにも、「この会社の商品なら安心して買える」と思っている会社が、1つか2つはあるのではないでしょうか。これは何を意味するのかというと、ブランドはプロモーション(セールスや宣伝)を不要にするということです。そういうのをすっ飛ばして、信頼感に基づいて購入するわけですからね。言い換えると、「いかにブランドを構築するか」が、企業のプロモーションにおける肝であるわけです。

ブランド以外にも、企業は様々な人・企業と関係を持っています。これらは「その他」としておきました。ただし、資本関係のような明示的な関係を除くと、信頼関係というのは個人のレベルに紐付きやすいものであり、経営資源として扱うのは難しいかもしれません。

組織力・文化

最後に、組織力・文化も、知覚できない経営資源です。これが何かと言われると言葉にしにくいですが、こういうものが確かに存在することは、あなたも知っているはずです。人間は多かれ少なかれ、周りの人間に影響を受けますからね。「チームビルディング」という、組織力を高めようとする取り組みも存在します。

以上、駆け足ではありますが、経営資源の分類を説明しました。

「ヒト・モノ・カネ」系のフレームワーク(分類)

さて、経営資源と言えば「ヒト・モノ・カネ」、またはそこに「情報・知的財産」などを加えたフレームワークがあまりに有名です。これらに関して、ここで言及しておきます。

私としては「ヒト・モノ・カネ」系のフレームワークは、経営資源を考える上では全く役に立たない、むしろ弊害すらある、と考えています。つまり、偽フレームワークですね。偽フレームワークに関しては、以下のリンクを参考にしてください。

私が「ヒト・モノ・カネ」系のフレームワークを偽フレームワークだと考える主な理由は以下になります。

  1. 実務において経営資源を考える際には、個別具体的な経営資源を特定する必要があり、ラフな分類は役に立たない
  2. 近年その重要性が増している「ブランド」が漏れている
  3. 語呂の良さが優先され、経営資源におけるカネの重要性が軽く見える

致命的なのは①です。実務で経営資源を考えるあらゆる状況で、経営資源のラフな分類が役に立つことはありません

経営資源を考える状況については次回のエントリーで詳しく説明しますが、そのすべての状況において、ざっくりカネだけを考えるか、カネ以外の個別具体的な経営資源を特定するかのどちらかです。ラフな分類が役に立つことはありません。例外もあるかもしれませんが、少なくとも私の経験上、「ヒト・モノ・カネ」系のフレームワークが役に立ったことはないです。

今回も、説明を終わらせなければならない関係上、経営資源をラフなカテゴリーに分けて説明しました。しかし、実務において重要なのは、個別具体的な経営資源を特定することです。つまり、先ほどの表を自分に合わせてさらに細かくし、取捨選択することが重要です。ここを誤解しないでください。

Point

個別具体的な経営資源を理解することが重要

それでも、「ヒト・モノ・カネ」系のフレームワークが網羅的なのであればまだ使い道があったのですが、残念ながらこの手の分類はすべてブランドが漏れています(理由②)。ということで、どうしようもありません。

率直に言って、「ヒト・モノ・カネ」が優れているのは語呂の良さだけですね。実際、このような分類は日本語でしか存在しません4

「ヒト・モノ・カネ」と日本経済

私は割と真面目に、「ヒト・モノ・カネ」が普及したことは日本経済衰退の一因ではないかと疑っています。以下のリストを見てください。

  • ソフトウェア軽視
  • ブランディング軽視
  • 内部留保を溜め込んで資金を上手く使えない
  • ヒトのコストが重すぎて、時代の変化に合わせて業態をスピーディーに転換できない

これらは、ここ20年で日本企業/日本社会が犯してきた過ちだと私が考えるもののリストです。これらは、恐ろしいほど「ヒト・モノ・カネ」の欠点と一致しています。

まあ、こんなことは検証しようがないので考えても意味がないですが、とにかく、「ヒト・モノ・カネ」系の(偽)フレームワークは覚えることの弊害の方が大きいと思うので、忘れることをオススメします。これを覚えるくらいなら、「カネ・カネ・カネ」と覚えた方がよいでしょう。これを守銭奴のフレームワークとして提唱していきたいと思います。

守銭奴のフレームワーク

経営資源 = カネ × カネ × カネ

さすがにこれは冗談ですが、この方が本質を捉えていることは事実でしょう。ビジネスにおいてカネは別格の経営資源であり、他と同列に扱う理由はありません(理由③)。この点に関しても、今後のエントリーで解説します。

以上、経営資源の分類を説明しました。

ただ、これだけ覚えても役に立たないですよね。このような分類を実際に活かす状況、つまり、経営資源を考えることになる論点もセットで理解する必要があります。次回のエントリーで、これに関して解説します。

また、マーケティング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。

参考文献


  1. このように経営資源を定義した場合、「企業が人材を所有する」という表記・ニュアンスになります。さすがに人材は企業に所有されるようなものではないため、この表記は厳密にはおかしいのですが、経営資源に人材を含めないのは無理がある点から、このような定義になっています。ご了承ください。 

  2. 「カネ」と「ヒト」がカタカナ表記になっているのは、経営資源らしさを出すためです。特にそれ以上の意味はないので、漢字の方が好みであればそちらを使ってください。 

  3. 旧来は知的財産とは「人間の創作した、有用な情報」だったのですが、最近は「ビッグデータ」に代表されるようにデータに有用な使い道が見出されつつあります。データは「人間の創作した」情報とは言えませんが、知的財産には含まれるべきといった議論があるため、このような説明にしてあります。 

  4. 思いつくあらゆる英単語で検索をかけましたが、「ヒト・モノ・カネ」のような分類で経営資源を説明している英語のサイトは1つも見つからなかったので、こう断言して問題ないと思います。