ビジネスモデルとは何か/ビジネスモデルのフレームワーク

このエントリーでは、ビジネスモデルとは何かを説明します。

早速始めていきましょう。

ビジネスモデルとは

まずは「ビジネスモデル」という言葉の意味を明確にしましょう。この言葉は何を意味するのでしょうか?

とりあえず、辞書的な定義を確認しておきましょう。『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』におけるビジネスモデルの定義は、以下のようになっています。

ビジネスモデルとは、どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的に記述したもの

これでもよいのですが、このサイトではもう少しシンプルな定義を採用します1

Keyword

ビジネスモデル:企業の行う価値創造プロセスを表現したもの

では、この定義を掘り下げていきましょう。

価値創造プロセスとは

最初に、「価値創造プロセス」という言葉の意味を確認しましょう。以下のスライドを見てください。

価値創造プロセスとは

このスライドに、価値創造プロセスそのものが描かれています。抽象的ですが、具体例は後ほど出てきますのでちょっと我慢してください。

上のスライドにおいて、以下の3点を確認してください。

  1. 顧客には、解決したい問題(ニーズ)がある(図の吹き出し部分)
  2. その問題を、企業が解決策を提供することで解決する(企業から顧客への流れ)
  3. その対価として顧客がお金を払っており、そのお金は企業が投下した資金より大きい(顧客から企業への流れ)

この一連の流れが、価値が創造されるプロセスです。①顧客が問題を抱えており、②企業が顧客に対して問題解決を提供し、③顧客がそれに対して報酬を払う、という一連のプロセスを通じて、顧客は満足し、企業には投下した資金よりも多くのお金が戻ってきたのです。

要するに、一連のプロセスを通じて、みんなハッピーになったということです。これをそれらしく言うと「価値が創造された」という表現になるわけですね。事業によって、パートナーが含まれたり、商品や金の流れが複雑化したりすることはありますが、あらゆる企業が行っている活動は、この枠組みに必ず収まります。

もちろん、実際の商売では、顧客が満足しないことや、企業が投下した資金ほどの報酬が払われないことは起こります。しかし、中長期的なスパンで考えると、顧客が満足し、かつ企業が投下した資金以上の報酬が払われないと、このプロセスはまわらなくなります。つまり、長い目で見ると、価値を創造していない企業は存続できないので、「企業は価値創造プロセスをまわしている」と言い切って問題ありません。

以上が、価値創造プロセスの説明です。ただ、このプロセスは抽象的ですよね。このプロセスを具体的に表現したものがビジネスモデルだと考えてください。

ビジネスモデル:パソコン販売の例

では、実際のビジネスモデルを見てみましょう。

ビジネスモデルの例

これは直販(商品を作った企業が、顧客に直接売る)という、最もシンプルなビジネスモデルです。なお、自明であるため、企業が投下した資金は割愛しています(以降も割愛します)。

先ほど説明した3要素が、すべて含まれていることを確認してください。

  1. 顧客には、解決したい問題(ニーズ)がある(図の吹き出し部分)
  2. その問題を、パソコン会社が解決策(パソコン)を提供することで解決した(企業から顧客への流れ)
  3. その対価として、顧客がお金を払っている(顧客から企業への流れ)

これは価値創造プロセスを具体的に説明していますよね。というわけで、このようなものがビジネスモデルです。

なお、ビジネスモデルを図解するかは好みの問題です。図解した方が視覚的に分かりやすくなりますが、複雑な説明はしにくくなります。ビジネスモデルを記述する目的と照らし合わせて、図解するかを決めてください。詳しくは後述します。

補足

ここまでの内容について、2点ほど補足します。ビジネスモデルの定義をもう一度確認してください。

Keyword

ビジネスモデル:企業の行う価値創造プロセスを表現したもの

まず、「企業の行う」の部分に関しては、事業主体を明確にした方が分かりやすいと思ったので含めました。厳密には事業主体が企業とは限らない(個人でも構わない)のですが、分かりやすさのために事業主体を「企業」と表現しています。適宜読み換えてください。

また、ここまでの説明における「問題」という言葉の使い方は、問題解決に特有のものです。ピンとこなかった方は、先に進む前に以下のリンクを読んでください。

なお、問題は「ニーズ」と読み換えても問題ありません。好きな方を使ってください。

ビジネスモデルのフレームワーク

ここまでの話で、ビジネスモデルを明らかにするためには、①顧客の問題、②問題解決の流れ、③金の流れ、の3要素を明らかにすればよいことが分かりました。よって、これをフレームワークとして覚えてしまいましょう。以下のスライドにまとめてあります。

ビジネスモデルのフレームワーク

論点の構造にすると、以下になります。

  • ビジネスモデル:この事業は、どのように価値創造するのか?
    • 問題:顧客の抱えている問題は何か?
    • 解決策(問題解決の流れ):企業は、顧客の問題をどのように解決するのか?
    • 収益モデル(金の流れ):顧客はどのように金を払うのか?

順に確認しましょう。

小論点①:問題

ビジネスモデルのフレームワーク①

1つめの小論点は、問題です。これがすべてのビジネスモデルの起点になります。先述のとおり、「ニーズ」と読み換えても構いません。

公園の砂場で穴を掘っても、金はもらえません。そんなことを誰も望んでいないからです。裏を返せば、金をもらうためには、誰かが望んでいることを叶える必要があります。これは価値創造の大原則です。

Point

価値を創造するには、誰かが望んでいることを叶える必要がある

この、「誰かが望んでいること」が問題です。問題は、以下のような表現で書かれます。

  • XXしたい
  • XXがなくて困っている
  • XXがあれば便利になるのに

ビジネスモデルを記述するときには、必ず問題から考えてください。そうでないと、何をしようとしているのか、ワケの分からないことになります。実際、問題を明確に定義せずにビジネスモデルを書いてしまうことは、「よくある」とは言わないまでも、たまにあります。本当に注意してください。

また、丁寧に考える場合は、問題と顧客を切り離して、以下の2つの問いを考えてもよいでしょう。

  • 問題:何が、解決されるべき問題なのか?
  • 顧客:上記の問題を抱えているのは、どのような人たちか?
    • 年代、性別、職業、好み、性格など、顧客を特徴づける要素を深掘りする

問題と価値

なお、このセクションで述べた「問題」と、一般に「価値」と呼ばれるモノは、表裏一体の関係にあります。価値創造のプロセスにおいては、問題は最終的に解決されるため、視点を企業や未来側(プロセス終了後)に持っていけば、問題が価値になるのです。以下の表で確認してください。

問題 価値
XXしたい XXできる
XXがなくて困っている XXがあって助かる
XXがあれば便利になるのに XXのおかげで便利になる

私見ですが、新規事業のプランなどでは「問題」が、既にある事業を分析するときには「価値」が多用される印象です。「結局、このプランは、どんな顧客の、どんな問題を解決するのか?」、「この事業の価値をもう一度確認しよう」といった具合ですね。どちらも本質的には同じことなので、上手く使い分けてください。

練習問題

では、ここまでの内容を確認しておきましょう。

Question

鉄道業界の価値を「移動」に焦点を当てて2つ答えよ。(=鉄道は、車やバスと比べて、どのように移動できる点が素晴らしいのか?)

以下に解答欄がありますので、答えを書いてみてください。自分で書いた方が、ずっと効率的に学習できます参考)。分からなくても、トライしてくださいね。なお、この解答欄に書いたことは保存できないので、解答を保存したい場合は自分のメモアプリなどを使ってください。

①安く移動できる、②中距離(3km〜300kmくらい?)を高速で移動できる、③決まった時間・間隔で移動できる、④自分が何もしなくて(運転しないで)移動できる、などが考えられます。④は「景色を見ながら移動できる」などに言い換えてもいいですね。

ちなみに、「大人数が一度に移動できる」というのは、正解にしてよいか微妙なラインです。これは企業側から見て輸送コストが下がる理由ではあっても、顧客にとっての価値かは怪しいですよね。実際、満員電車を喜んでいる顧客がいるとは考えにくいです。

小論点②:解決策

ビジネスモデルのフレームワーク②

2つめの小論点は、解決策です。厳密には、企業から顧客へと流れる、問題解決の流れですね。

問題/ニーズを特定できても、それだけでは金はもらえません。金をもらうためには、問題を解決する必要があります。この小論点では、どのように問題を解決するのかを具体的に記述します。

「どのように問題を解決するのか」というと複雑に聞こえるかもしれませんが、とりあえず商品(製品かサービス)を具体的に記述することがファーストステップです。例として、先ほどのスライドをもう一度見てみましょう。

ビジネスモデルの例

この場合、パソコンという商品が吹き出しに書かれている問題/ニーズを叶えることは明らかですよね。つまり、これが解決策です。

解決策をどのように述べるか

場合によっては、解決策は説明するより体験させた方が話が早いかもしれません

たとえば、上の例ではパソコンのアイコンだけで説明を済ませましたが、これはパソコンの機能が誰にとっても明らかなのでこうなっているだけです。

実際にこのフレームワークを使うケースでは、新規事業の企画書などで、まだその機能や価値が認知されていない商品を扱うこともあるでしょう。この場合は、この例のようにアイコンを置いて終了というわけにはいきません。その商品がどのように使われ、なぜ顧客の問題を解決するのかを受け手に詳しく説明する必要があります。

そして、それを言葉や写真だけで説明しきるのは難しい上に、時間の無駄かもしれません。予算があるなら、さっさと商品(プロトタイプ)を作って体験させた方がよいでしょう。一番いいのは、商品が顧客の問題を解決した実績を作ってしまうことです。このあたりも、状況に適した方法を選択してください。

Point

解決策を言葉で説明しきるのは難しいこともあるので、別の手段も検討した方がいい

小論点③:収益モデル

ビジネスモデルのフレームワーク③

最後の小論点は、収益モデルです。これはそのままですね。顧客から企業へと向かう、金の流れのことです。横文字だと「マネタイゼーション」なんて言ったりもします。好きな方を使ってください。

最近は無料でも便利に使えるサービスが増えてきたので誤解しがちですが、顧客から企業に金が流れることはビジネスモデルの絶対条件です。つまり、どこかのタイミングで、何らかの方法で、顧客(最低でも顧客の一部)が金を払っているのです。顧客から企業に全く金が流れないプロセスは、ビジネスモデルとは呼べません。

分かりやすいのはソーシャルゲームですね。あれほどのクオリティのゲームが基本無料で遊べるのは、一部の顧客がガッツリ金を払っているからです。そうでなければ、開発費が賄えるはずがありません。

ということで、ビジネスモデルには金の流れが必須です。以下の質問のうち、必要なものをピックして答えてください。

  • 顧客はいくら払うのか?
  • 顧客は誰に払うのか?
    • 広告モデルのように、顧客が事業主体である企業に直接払わないパターンもあります
  • 顧客のうち、どんな顧客が払うのか?
    • 基本無料のモデルなどでは、金を払うのは一部の顧客です
  • どんな手段・頻度で払うのか?
    • 一括払い以外にも、サブスクリプションのような定額の引き落としモデルもあります

練習問題

では、これも練習問題で確認しましょう。

Question

コンビニの買い物と、携帯電話の回線契約における、収益モデルの違いを述べなさい。

コンビニの買い物は買い切りである。一方、携帯電話の回線契約はサブスクリプション(一定期間の回線利用権に対する、月額料金の支払い)である。

余談:さらに踏み込んだ「ビジネスモデル」

さて、以上でこのサイトにおける「ビジネスモデル」の解説は終わりなのですが、「ビジネスモデル」という言葉はかなり広い意味で使われているので、最後にその点についてフォローします。

このエントリーで紹介したのは、比較的シンプルな意味での「ビジネスモデル」です。表面的な価値創造プロセス(どんな問題を、どんな商品で解決し、どのように金を貰っているか)を「ビジネスモデル」と呼んだわけですね。

しかし、人によっては、「ビジネスモデル」とは表面的な価値創造プロセスだけでなく、そのプロセスを実現している裏側の仕組みや、そのプロセスが永続的に回り続ける仕組みまでを意味することがあります。具体的には、以下の要素も「ビジネスモデル」に含めるべきだ、という考え方です。

  • 価値創造プロセスを実現している裏側の仕組み
    • 経営資源の構成・調達方法
    • オペレーションの実態
  • 価値創造プロセスが永続的に回り続ける仕組み
    • 集客の方法(コミュニティ形成なども含む)
    • プライシングとコスト構造(利益をどのように出しているか)

ここまでくると、「ビジネスモデル」とは事実上「ある事業において、企業がやっていることすべて」と解釈して問題ありません2

どのように使い分けるか

では、どのようにこれらの意味を使い分けるかですが、あなたの中で「ビジネスモデル」という言葉の意味が定まっており、それが受け手にも伝わっているなら、どのような意味で使っても問題ありません。とにかく、齟齬が生まれないように注意することが第一です。

一般論としては、ビジネスモデルを記述する目的に応じて、定義と表現方法を調整するのがオススメです。ざっくりした方針としては、以下のように考えてください。

  • 複数の企業や事業を比較したい/ビジネスモデルをパターンとして掴みたい → 価値や解決策は抽象化し、ビジネスモデル全体を図解する
    • 今回紹介した定義よりも、さらにシンプルな意味で「ビジネスモデル」という言葉を使うということです。詳細は次回のエントリーを見てください
  • ある1つの企業や事業を簡単に理解したい → 今回紹介した定義で、ビジネスモデルを図解する
  • ある1つの企業や事業を深掘りしたい → 「やっていることすべて」という意味で「ビジネスモデル」を使い、それをテキストで記述する
    • 図解できなくもないですが、結局テキスト(吹き出し)を多用することになり、どうしても複雑になります

ということで、目的に応じて定義と表現方法を使い分けてください。文末に参考文献を載せておくので、他の方が書いたビジネスモデルも見てみるとよいでしょう。

以上、ビジネスモデルを説明しました。以下のリンクで基本的なビジネスモデルを紹介しているので、こちらも読んでみてくださいね。

参考文献


  1. こうした理由ですが、価値は顧客が満足した時点で生まれるものなので、「価値を創造し、顧客に届ける」という表現は誤解を招くと感じたからです。 

  2. 個人的には、ここまで広い意味にしてしまうと「モデル(型)」ではないのではないか、と思っています。