ビジネスとは何か/どういうものか【ビジネスのフレームワーク】

このエントリーでは、「ビジネスとは何か/どういうものか」を学びましょう。

社会人になれば、多かれ少なかれ「ビジネス」というものに関わらざるを得ません。しかし、改まって「ビジネスって何?」と聞かれると、答えに窮してしまう人も多いのではないでしょうか。このエントリーでは、ビジネスをフレームワークとして捉え、その構成要素を説明していきます。

では始めていきましょう。

ビジネスのフレームワーク:まとめ

早速、ビジネスの全体像を見てください。以下のスライドにまとめてあります。

ビジネスのフレームワーク

まずは最もハイレベルな構造を掴んでください。以下になります。

ビジネスのフレームワーク

ゴールの達成 = 資金の調達 × 資金の使用

論点の構造で書くと、以下のようになります。

  • ゴールの達成:XX(企業)はゴールを達成するために、何をするか?
    • 資金の調達:資金をどこから、どうやって調達するか?(=狭義のコーポレート・ファイナンス)
    • 資金の使用:調達した資金を、何に使うか?

なお、便宜上「企業/自社」と表現していますが、個人事業でもこのフレームワークは使えます。

このフレームワークが意味しているのは、「ビジネスとは、何らかのゴールを達成するために、資本家からお金を引っ張ってきて、それを使う活動だ」ということです。これが最もハイレベルなビジネスの定義なので、とりあえず押さえてください。まだピンとこないかもしれませんが、この後でさらに具体化します。

Point

ビジネスとは、何らかのゴールを達成するために、資本家からお金を引っ張ってきて、それを使う活動である

ポイントは以下の2つです。

  1. 企業のゴールを一般論で考える意味はない
  2. 企業の行っている活動は、大別すると「資金の調達」か「資金の使用」のどちらか

順に説明します。

企業のゴール

結局のところ、企業におけるあらゆる活動は、企業のゴールを達成するために行われています。そうでなければ、オフィス街に大きなビルを建てたり、従業員が満員電車に乗って通勤したりするわけがありませんよね。何かゴール(目的)があるのです。

では、企業のゴールは何なのでしょう?

教科書的な答えだと、ここは「利益の創出」や「顧客の創造」などと言われるところです。

しかし、現実的には、企業のゴールを一般論で考えることには意味がありません。現実のビジネスにおいて、ゴールを決め、それに従い資金の調達・使用方法を決めるのは、「企業」という抽象的な存在ではなく、「経営者」という具体的な人間だからです。すべての経営者が同じゴールに向かって活動しているわけがありません。

企業のゴールに関しては、これ以上掘り下げると脱線になるため、詳細は以下の別エントリーにまとめました。教科書的なゴールを含めて説明しているので、このエントリーの後にでも読んでみてください。

話を戻すと、「ビジネスとは、Xを達成するための活動である」といった捉え方をすべきではない、ということです。こう捉えても、Xがケースバイケースなので、これ以上の具体化ができません。シンプルに、「ビジネスとは、Yのような活動のことだ」という形で、表面的な行動だけに着目すべきなのです。

Point

企業のゴールを一般論で考えることには意味がない

企業が行っている活動/ビジネスとは何か

では、企業が行っている活動は何なのでしょう? フレームワークをもう一度確認してみましょう。

ビジネスのフレームワーク

ゴールの達成 = 資金の調達 × 資金の使用

このとおり、あらゆる企業が行っている活動は、①資金の調達、②資金の使用、の2つです。例外はありません。

なぜ、そんなことになるのでしょうか? 答えは、ゴールが何であれ、企業が行うのはビジネスだからです。というより、「ビジネスを行う集団」のことを「企業」と呼んでいます。

では、ビジネスとは何なのでしょう? ゴールから離れて、表面的な活動を追ってみましょう。

ビジネスとは、金を何かに換えて、金を増やす活動です

以下のスライドを見てください。先ほどのスライドの小論点の部分を具体的にしてあります(その分ゴチャゴチャしてしまいますが、ご容赦ください)。

ビジネスとは何か

緑の矢印は金の流れを意味し、グレーの矢印は金以外のモノの流れです。緑の矢印の太さは金の量を意味します。また、数字は大まかな順序だと考えてください。

順に見ていきましょう。まず、資本家から資金を調達します(1番)。少人数で事業を始める場合はこのプロセスはカットされますが、それはすでに資金がチームメンバーという人材に投下された状態だと考えてください。

次がポイントです。企業は資金を何かに投下して商品に変換し、顧客に問題解決を提供します(2番)。これは逆から考えれば明らかですよね。企業は、顧客に金を渡したりはしません。それでは自分が顧客になってしまいます。

企業が資金を投下するのは、人材に代表される経営資源や、プロモーション費用などです。ここでは詳細は気にしなくていいので、金が、金以外のモノに変換されるという点を押さえてください。

先に進みましょう。金以外のモノ、つまり商品ですが、これを通じて、顧客は価値を感じます。価値の対価として、企業は報酬をもらうわけですね(3番)。ここで、「報酬」の矢印が「資金」より太いことを確認してください。全体として、投下した資金を商品に換えた結果、最初に投下した資金よりも大きな金が帰ってきたわけです。これが「価値が創造された」ということです。

Point

ビジネスとは、金を何かに換えて、金を増やす活動である

あとは、このお金のうちの一部を国家や資本家に納めて(4番、5番)、一連のプロセスは終わりです。

だから何なのか

さて、「んで、だから何だよ?」と思ったかもしれません。ここまでに述べたことはまさに「ザ・お勉強」という感じで、示唆が弱いんですよね。そこで、逆から捉えてみましょう。

金を金のままで保有している企業は、ビジネスをしていないのと同じです1。言い換えると、ビジネスの世界では、金は常に使い道を求めています

こう考えると面白くなるし、世の中のニュースや疑問に対するヒントになるはずです。たとえば、「なぜ不良債権が生まれるのか」という問いに対する一つの答えは、「銀行は金を貸したがるから(=銀行は金を金のままで持っていると、ビジネスをしていないことになってしまってマズい)」ということでしょう。

個人の感覚だと理解しにくいニュースや金の流れの背後には、この「ビジネスでは、金は使い道を求める」というメカニズムが働いていることが多いです。覚えておいてください。

Point

ビジネスでは、金は使い道を求める

資金の使用のフレームワーク

資金の使用のフレームワーク

次に、スライドの右側部分のフレームワークについて説明します。

資金の使用のフレームワーク

資金の使用 = マーケティング × コンプライアンス

論点の構造で書くと、以下のようになります。

  • 資金の使用:調達した資金を、何に使うか?
    • マーケティング:顧客への問題解決による、価値創造のために使うか?
    • コンプライアンス:法令・倫理の遵守のために使うか?

このフレームワークで覚えておくべきことは、企業はマーケティングだけに資金を投入するわけにはいかないということです。あくまで、国家や社会からの承認があって、企業はマーケティング(ビジネス)を続けられるのです。

順に説明します。

マーケティング

まず、言葉の意味を明確にしておきましょう。このフレームワークにおける「マーケティング」とは価値創造プロセス全般のことで、これは「マーケティング」という言葉の最もハイレベルな使い方です。

Keyword

マーケティング:問題解決を通じた価値創造プロセス全体のこと

ちなみに、「マーケティング」という言葉の意味は人によってバラバラで、このように「価値創造そのもの」として使う人から「プロモーション」の言い換えとして使う人まで様々です。どれが正解ということはないのですが、使う人の間で意味の齟齬が生まれないよう、注意してくださいね。

マーケティングに関しては、今後も別エントリーで様々なフレームワークを紹介するため、これ以上の説明は割愛します。

コンプライアンス

次に、「コンプライアンス」とは、法令・倫理の遵守のことです。

Keyword

コンプライアンス:法令・倫理の遵守

ここで特に重要なのは、法令の遵守です。法令を守ることは、企業にとってマーケティングに優先します。理由はシンプルで、そうしないとビジネスを続けられないからです。

たとえば、起業をするときには法務省に法人登記をしますし、その後は毎年決算(財務会計)をします。これらの活動は、「やらないとどうなるのか」を調べるのが馬鹿らしいレベルで、当たり前にやることです。つまり、法令を守るためのコストは企業にとって優先順位が最も高く、絶対にカットできません。

先ほどは分かりやすさのために「報酬が生まれてから納税する(マーケティング→コンプライアンス)」という流れで説明しましたが、あれは厳密には間違いです。正しくは、報酬が生まれようが生まれまいが、最低限のコンプライアンスコストが先に発生します。

Point

法令コンプライアンスは、マーケティングに優先する

ここから、あなたがなぜ勤怠管理や領収書の整理に時間を使わされるのかが分かるはずです。これらの業務は法令コンプライアンスにかかるので、企業としては、あなたの普段の業務より優先順位が高いのです。

ということで、今後「何でこんなことしなきゃならんのか」と思う業務があったら、法令コンプライアンスの筋を疑ってみてください。イライラが減るかもしれません。減らないかもしれません。

以上、ビジネスのフレームワークを説明しました。このフレームワーク自体を使うことは少ないかもしれませんが、ハイレベルな視点を持っているとあらゆるケースで役に立ちます。頭の片隅に入れておいてくださいね。

余談:ビジネスの起点は何か

余談ですが、最後にビジネスの起点についてお話しておきます。もう一度先ほどのスライドを見てください。

ビジネスとは何か

誤解してほしくないのですが、このサイクルの根本的な発火点は資本家ではありません。一連のサイクルを最も分かりやすく説明しようとした結果、このようなスライド上の表現になっているだけです。

このサイクルの根本的な発火点、つまりビジネスの火種は、問題を抱えた顧客の存在です。問題を抱えた顧客がいるから、その問題に対する解決策を考える企業が現れ、その解決策を実装するための資金需要が生まれるのです。

そして、問題とは要するに人々の欲望のことです。このあたりの話は、以下のリンクも参考にしてください。

つまり、ビジネス(経済活動)のエンジンは人々の欲望です。人間の欲望が、ビジネスのサイクルを回すのです。資金が潤沢にあったところで、このサイクルが回るわけではありません。

逆に言えば、現状に満足して、何の欲望もない人が増えるほど、ビジネスチャンスはなくなっていくわけです。欲しくもないものを買わせるというのは、基本的に無理筋ですからね。

これは「経済成長」というものを考える上で興味深い話です。たとえば、日本の経済成長が停滞している原因として高齢化社会が挙げられることが多いですが、私としては「現代の先進国では、ほとんどの人は衣食住が満たされて、後はスマホがあればハッピーなので、一人あたりの欲望が前ほど大きくない」という筋もあるのではないかと疑っています2。ただ、「貧しいから欲望もなくなった(買えないモノは欲しがらない)」という筋もあるので、検証は難しいですが。

ということで、ちょっと話が大きくなってしまいましたが、面白いテーマだと思うので、あなたも考えてみてくださいね。

さらに学習を進めたい人は

ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました。文中でも紹介しましたが、次は企業のゴールは何かを掘り下げていきましょう。

また、マーケティングで使える主なフレームワークは、以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。


  1. ただし、この話は建前論です。実際は、より魅力的な投資機会を待つ、市場縮小リスクに備える、といった理由で企業が現金を貯め込むことは全く普通のことです。程度問題だと考えてください。 

  2. 厳密に書くと、「一人あたりの欲望が前ほど大きくない」というより、「テクノロジーの進歩(主にスマホ)によって、人間の基本的欲望を超低コストで実現できるようになった」ということです。