ロジカルシンキングの3つのポイント

ロジカルシンキング

このエントリーでは、ロジカルシンキングの3つのポイントを説明します。この3つを理解すれば、とりあえずロジカルシンキングの基礎は卒業です。少し長いですが頑張ってください。

なお、事前に以下のエントリーを読んでおいてください。

では始めていきましょう。

まとめ

まずは以下のスライドを見てください。ロジカルシンキングのポイントをまとめてあります。

ロジカルシンキングのポイント

スライドにあるとおり、ポイントは以下の3つです。

  1. 論点を定める
  2. 主張を明確にする
  3. 妥当な根拠を構築する

この3つがロジカルシンキングのキーポイントです。詳しくはこれから説明するので、ここではとにかく「この3つがポイントだ」ということを押さえてください。この3つを上手くできるようになることが、ロジカルシンキングを学ぶ上でのゴールです。

では早速、それぞれのポイントを詳しく学んでいきましょう。

ロジカルシンキングのポイント①:論点を定める

ロジカルシンキングのポイント①

ロジカルシンキングのポイントその①は、論点を定めることです。これが最も重要であるにも関わらず、多くの人に見過ごされがちなポイントです。しっかり押さえてください。

では、順に説明していきましょう。

論点とは

まずは、論点とは何だったかを確認しておきましょう。

Keyword

論点:答えを出そうとする問い

このように、論点とは答えを出そうとする問いのことです。要するに、「いま考えたい問い」のことだと捉えてください。

では、この定義を詳しく説明していきましょう。

まず、論点とは問い(疑問)です。言い方を換えると、論点は必ず疑問文で書けます。逆に言えば、疑問文で書けないことは論点ではありません。たとえば、「どの会社に就職するべきか?」は論点ですが、「就職活動」は論点ではありません。疑問文になっていないからです。

また、論点とは簡単には答えが出せない問いです

これは定義ではなく、決め事です。厳密には、どんな問いを論点にしても構いません。しかし、すぐに答えが出てしまう問いに対して、わざわざロジカルシンキングというスキルを使う必要がないのです。たとえば、「今日の昼ごはんを何にするか?」という問いを論点と呼んで、ウンウン頭を使う意味はないでしょう。食べたいと思ったものを食べるだけです。これ以降は、論点とは簡単には答えが出せない問いのこととします。

なぜ論点を定めるのか

なぜ、ロジカルシンキングでは論点を定める必要があるのでしょう?

答えはシンプルで、論点を定めなければ、論点に答えることができないからです。

順に説明していきます。

何に価値があるのか

まず大前提として、「論点を考えることに価値があるのではなく、論点に答えることに価値がある」ということを押さえてください。

Point

論点を考えることに価値があるのではなく、論点に答えることに価値がある

ある論点を考えることは、誰にでもできます。たとえば、今すぐ「宇宙はどうやって始まったのか?」という論点を考えてみてください。何も思いつかなかったもしれませんが、少なくともウーンと頭を使って、答えを探すことはできたでしょう。このように、論点さえ提示されれば、誰でも考えることはできるのです。そして、これは誰でもできることなので、価値はありません。

価値を生むのは論点に答えること、すなわち、ロジックを示すことです。そして、ロジックには最低でも主張が必要です。つまり、価値を生むには最低でも主張が示される必要があります。先ほどの例なら、「宇宙はどうやって始まったのか?」という論点があるときに、「宇宙は、かくかくしかじか、このように始まった」と主張できて始めて、価値が生まれます。

もちろん、本当に価値が生まれるためには、この主張が正しい必要があります。ただ、その話は後に回しましょう。ここで押さえてほしいのは、考えるだけでは足りず、考えた結果(ロジック、最低でも主張)が示されなければならないということです。

これは大事なことなので、別の言い方もしておきましょう。考えること自体が目的であることは、まずありえません。一人で考える場合なら、あなたの目的は答えを見つけて「自分の行動を変えていくこと」や、「知的好奇心を満足させること」であるはずです。「延々と答えを探し続けたい」ということではないでしょう。他の人も巻き込んで考えるなら尚更です。会議や議論の目的は「合意する」や「決める」であって、「考える」ではありません。

価値を生むために、最低限必要なこと

というわけで、考えるだけで終わってはダメです。主張が示されなければなりません。

そして、論点がコロコロ変わっていては、私たちは主張に辿り着けません

先ほど述べたように、論点とは簡単には答えが出せない問いのことです。にも関わらず、論点が頻繁に変わっていては、投下する時間とエネルギーが分散してしまい、どの論点にも主張が打ち出せなくなります。つまり、一つの論点に時間とエネルギーを集中して使わなければ、論点に答えは出せないのです。これが論点を定める理由です。

論点を定めることは難しい

「論点を変えないなんて、そんなの当たり前だろう。何を言っているんだ」と思ったかもしれません。しかし、意識しないと、論点は変わってしまうものです

たとえば、「インターネットで調べものをしていたら、いつの間にか全く関係ないページを見ていた」という経験が、あなたにもあるでしょう。私には数え切れないほどあります。先ほどは、人工知能について調べていたつもりが、いつの間にか将棋のタイトル戦の歴史について掘り下げていました。

もっと身近な例では、日常会話があります。ファミレスや居酒屋で友達と会話しているときに、論点(話題)が定まったままなことなどありえません。次々と話題が変わっていき、それを変だとは思わないのが普通です。リラックスした状態では論点が次々に変わっていくのが普通であり、1つの論点が維持されることなどありません。

ここまでは「論点が変わってしまう例」でした。もっとひどい例として、そもそも論点が分かっていないというケースもあります。何かを考えようとする当の本人が、論点を分かっていないのです。

これは特に、ビジネスにおいて部下が上司から任された論点を検討するケースにおいて顕著です。上司のコミュニケーションや部下の理解能力に問題があり、部下が論点を理解しないまま検討が始まってしまうのです。もちろん、論点を理解せずに考えることはできませんから、実際は「考えているということになっているが、実は何も考えていない(もしくは、間違った論点を考えている)」ということになります。

このように、論点は変わったり、分からなくなったりするものです。しかし、これではいつまで経っても論点に答えられるようにはなりません。

論点を定める方法

では、どうしたら論点を定められるのでしょう?

答えはシンプルで、論点を書くことです。

これだけです。論点を決めたら、それを書いて、見えるところに置いておきましょう。私たちの頭の中と違い、書いた論点はコロコロ変わったりしません。これだけで論点が定まります。本当にシンプルですが、これがロジカルシンキングにおいて最も大切なことです。

あなたが考えたいことは、何ですか?

これを言葉にして、書き留めてください。疑問文を1つ書くだけです。これが「考える」という行為のスタート地点です。

Point

論点を定める方法:論点(疑問文)を、書く

論点を書いたら、その疑問文を限界まで具体的にしてください。以下の視点でチェックしましょう。

  • 曖昧な形容詞や副詞(「適当な」、「多くの」、「すごく」など)が含まれていないか?
  • 数値で表現できることはないか?
  • 主語や目的語は、明確に書かれているか?(英語に翻訳してみるのがオススメです)

自分の書いた文字とにらめっこしながら、自分が何を考えたいのかを考えてください。こうすることで論点が明確になります。

とにかく、論点を書く

論点を書くことが、ロジカルシンキングで最も重要なポイントです。このエントリーは長いですが、とにかくこれだけは覚えていってください。

私の経験上、いつまでもロジカルシンキングが上達しない人の原因は、論点が定まらないことにあります。これは100パーセントそうです。論点を定めることは考えるという行為の起点なので、ここがいい加減なままその先のトレーニングに進んでも意味がないのです。

ロジカルシンキングというと、いきなり「MECE」や「Why so?」などの概念に飛びついてしまう人が多いと思います。断言しますが、そんなことより先に、1つの明確な疑問文を書いてください。これができるようになるまで、先に進むべきではありません。

議論をする場合

ここまでは「考え方」の話でした。この「論点を定める」というポイントを「議論の仕方」に転用すると、以下のようになります。

人と議論する際には、冒頭で論点を合意しましょう。会議やプレゼンのような重たい議論の場合には、書いた論点を見せるべきです。

少なくとも、これで議論の開始時点では論点が定まります。ただし、訓練を受けていない人が議論に参加している場合は、議論の最中に論点がズレていくことは日常茶飯事です。議論を通じて、論点がズレないように努力しましょう。

また、議論を進めていく過程で論点が変わることもあります。無意識に論点がズレていくのではなく、「この論点より先に、こっちの論点を考えないとダメだ」と、論点が進化していくのです。これ自体は良いことですが、この場合も「現在の論点」をホワイトボードなどに書くなり、口頭で確認するなりして、現在の論点を明確にすることをオススメします。論点が変化していることについてこられない人がいると、議論が噛み合わなくなってしまうのです。

一旦、ここまでの話をまとめましょう。ロジカルシンキングの最初のポイントは、論点を定めることです。考えたいことを明確にして、そこからブレないようにしましょう。そのためには、論点を書くことが有効です。

ロジカルシンキングのポイント②:主張を明確にする

ロジカルシンキングのポイント②

ロジカルシンキングのポイントその②は、主張を明確にすることです。

主張とは

まずは、主張とは何だったかを確認しておきましょう。

Keyword

主張:論点に対する直接的な答え

このように、主張とは論点に対する直接的な答えです。「結論」でも構いません。これを明確にすることが、ロジカルシンキングの2つめのポイントです。

なぜ主張を明確にするのか

なぜ、ロジカルシンキングでは主張を明確にする必要があるのでしょう?

答えはシンプルで、主張が分からないと価値が生まれないからです。

繰り返しになりますが、論点を考えることに価値はありません。価値があるのは論点に対する答え(ロジック)であり、ロジックの中心にあるのは主張です。考えるという行為が価値を生むためには、主張がどうしても必要なのです。

もちろん、ある論点を考え始めた直後では、主張は分かりません。その場合は、「まだ主張は分かっていない」というのがあなたの主張です(ややこしいですが)。しかし、ここで終わるわけにはいきません。最終的には「XXだ」と主張するか、「主張は分からなかった」と言うかのどちらかです。後者は考えることを止めることに他ならず、価値は生まれません。価値を生み出したいなら、主張するしかないのです。

主張を明確にする方法

どうすれば、主張を明確にできるのでしょう?

実は、特にやることはありません。論点さえ明確になっていれば、主張は自動的に明確になります

これはどういうことなのでしょうか。まずは以下の会話をみてください。

Aさん
Aさん

どうしたら、来月までに3kg痩せられるかな?

Bさん
Bさん

あ、このあいだ、テレビで見たよ。日曜日の9時からやってる番組なんだけど、面白くて毎週見てるんだ。バナナダイエットをするべきだよ。

この会話のうち、論点に該当するのはAさんの以下の発言です。

Aさん
Aさん

どうしたら、来月までに3kg痩せられるかな?

このとき、以下の5つの言説のうち、どれが主張になりうるでしょうか? 考えてみてください。

  1. 体重を1kg減らすためには、7200カロリーを消費する必要がある。
  2. 毎日2時間、ジョギングをするべきだ。
  3. 通常の食事ではタンパク質が不足しがちなので、プロテインでタンパク質を補うことが有効だ。
  4. こんにゃくダイエットをするべきだ。
  5. こんにゃくは低カロリーに関わらず満腹感が生まれるので、空腹感を紛らわすのに役立つ。

答えは、②と④です。①、③、⑤はダイエットに関連したことを述べてはいますが、論点に直接答えていません。論点が聞いていることは「どうしたら」、つまり、何をするべきかです。ということは、「XXをするべきだ」という言説しか主張にはなれません。

もちろん、論点が与えられた直後では、ダイエットに関する知識がないかぎり「XXをするべきだ」の「XX」を埋めることはできないでしょう。また、「XX」を埋めたとしても、その主張が正しいかは分かりません。しかし、まだそこは問題ではありません。論点さえ分かれば、主張として言うべき言説の型(以下、「主張の型」と表記します)は決まるということを押さえてください。

Point

主張の型を決めているのは論点である

以下の表に、論点のタイプ別に主張の型を分類しておきました。これを見れば、論点に応じてどんな言説が主張になるかが分かるはずです。

論点と主張の型

ちなみに、表にある「オープン/クローズド・クエスチョン」というのは、回答範囲が絞られるかで疑問文を分類する形式です。オープン・クエスチョンは回答範囲が絞られず、クローズド・クエスチョンは回答範囲が絞られます。自分の論点はどちらのクエスチョンなのかを意識できれば、主張を間違えることはなくなるでしょう。

話をダイエットに戻しましょう。「どうすれば来月までに3kg痩せられるのか?」という論点が与えられた時点で、「Yをするべきだ」という主張をしなければならないことが分かります。あとは、この「Y」を埋めるだけです。

「Y」が何になるかは、あなたがどのように考えるかによって変わります。しかし、あなたの主張が「Yをするべきだ」であることは変わりません。つまり、もう主張は明確になっています。

このように、論点が明確であれば、主張の型は自動的に明確になります。追加で何かする必要はありません。考える過程で主張が変化していくことはあっても、自分の主張を見失うことはないでしょう。

Point

論点が明確であれば、何を主張すべきか(主張の型)は自動的に明確になる

もし「どんなことが主張になるのか、サッパリ分からない」という場合は、論点が明確になっているかをチェックしてください。あとは先ほどの表を確認すれば、主張の型が分かります。ポイント①(論点を定める)とポイント②(主張を明確にする)は表裏の関係にあるので、とにかく論点を明確に書きましょう。

議論をする場合

人と議論をする場合には、どうすれば主張を明確にできるでしょうか?

大前提として、あなた自身が、自分の主張を理解している必要があります。そうでなければ、他人に対して主張を明確にすることは絶対にできません。人と議論する前に、先ほど紹介した方法を使って主張を明確にしておきましょう。

自分の主張が分かれば、それを他人に対して明確にすることは簡単です。2つの方法があるので、順に紹介します。

第一の方法は、真っ先に主張を述べるというものです。先ほどの例で確認してみましょう。

Aさん
Aさん

どうしたら、来月までに3kg痩せられるかな?

Bさん
Bさん

バナナダイエットをするべきだよ。このあいだ、テレビで見たんだ。日曜日の9時からやってる番組なんだけど、面白くて毎週見てるんだ。

主張が分かりやすくなりましたね。このロジックにはまだ改善の余地がありますが、一旦それは置いておきましょう。このように、ロジックの冒頭で主張を述べると、主張が分かりやすくなります。

第二の方法は、どの言説が主張かを言葉で補足するというものです。

Aさん
Aさん

どうしたら、来月までに3kg痩せられるかな?

Bさん
Bさん

あ、このあいだ、テレビで見たよ。日曜日の9時からやってる番組なんだけど、面白くて毎週見てるんだ。バナナダイエットをするべきだよ。ということで、ゴチャゴチャしゃべっちゃったけど、結論としてはバナナダイエットするのがオススメ。

このように、「私の主張(結論)はここだ」と明確に述べれば、主張が分かりやすくなります。会話では「話しながら頭が整理されて、主張に到る」ということもあるので、そういうときはこちらの方法を使いましょう。

余談:発想法

さて、ここで脱線して、大事な話をしておきます。

このセクションで説明したのは、主張を明確にする方法でした。そして、主張の型は論点から自動的に決まるので、論点さえ明確になっていれば、主張を明確にするために特別なことをする必要はないという話をしました。

しかし、これでは大事なポイントが1つ抜けています。結局、どうしたら優れた主張を思いつけるのでしょうか?

論点さえ明確になれば、主張の型は分かります。しかし、実際に「考える」という作業をする上で知りたいのは、主張の型ではなく、具体的な主張です。それも、問いに対する正しい答えであり、かつ他の人には思いつけないような、できるだけ優れた主張を打ち出したいわけです。そうでなければ、「考える」という作業において他者を上回る価値を出すことはできません。

つまり、「いかに優れた主張を発想するか」という部分が、ロジックを作る上で最も重要です。優れた主張を思いつくためには、何をしたらいいのでしょう?

それで、申し訳ないのですが、この問いはロジカルシンキングでは扱いません。「主張をどうやって導くか?」という問いはアート的な要素が多分にあり、系統立てて学べることがないのです。

「ロジカルシンキングでは基本的な考え方を学ぶと言っておいて、ロジックを作る上で最も重要な部分が説明されないって、そんなのあり?」と思ったかもしれません。

答えを言うと、そんなのありです。なぜなら、この部分までノウハウ化できてしまうなら、誰もが同じように考えることになってしまうからです。それでは、私たちがこれから何かを考える意義は残りません。ここがノウハウにならないからこそ、私たちが未解決の問いを考える意義があるのです。

あなたにしか思いつけない主張を待っている問いがある

こんなにワクワクすることはないでしょう。「主張を導く方法は分からない」というのは、バッドニュースではなくグッドニュースだと捉えてください。

ちなみに、主張を導く方法はこれまでに多くのものが考案されており、それらは「創造力」、「クリエイティビティ」、「発想法」、「アイデア出し」といったジャンルの本にまとめられています。決定的な方法があるわけではないですが、引き出しを増やしておく意味で、いくつか目を通しておくとよいでしょう。

ロジカルシンキングのポイント③:妥当な根拠を構築する

ロジカルシンキングのポイント③

ロジカルシンキングのポイントその③は、妥当な根拠を構築することです。

このポイントは、実は2つのことを言っています。「ロジックには根拠が必要である」ということと、「根拠は妥当なものでなければならない」ということの2つです。

順に説明していきましょう。まずはロジックに根拠が必要である理由からです。

なぜ根拠が必要なのか

まず、根拠とは主張が正しい理由です。これは特に問題ないでしょう。

Keyword

根拠:主張が正しい理由

なぜ、ロジカルシンキングでは根拠が必要なのでしょう? 

結論を先に言うと、根拠を検討する以外に、主張の正しさを検討する方法が存在しないからです。

これはややこしい話なので、丁寧に説明していきましょう。

まず、ポイント①「論点を定める」とポイント②「主張を明確にする」を実行できれば、論点に対して何らかの主張を示せるはずです。つまり、これで「考える(問いに対する答えを探す)」という行為の最低ラインを超えることができます。

しかし、これだけでは足りません。私たちが知りたいのは正しい答えであって、「とにかく、どんな答えでもいいから知りたい」と思っているわけではないからです。もう一度、「考える」という行為のゴールを確認しておきましょう。

Point

「考える」という行為のゴール:正しい答えを出すこと

つまり、主張が示されるだけではダメで、主張が正しい必要があります

主張の正しさを判断する方法

では、どうしたら主張が正しいかを判断できるでしょう?

ここでまず、大事なことを押さえてください。ある主張が正しいかどうかは「決めること」であり、「(何らかの絶対的なルールによって)決まること」ではありません。私たちが考える問いに、唯一の正解はないからです。

Point

正しい答えは決めるものであって、何らかのルールによって決まるものではない。

そして、主張の正しさを決めるために、何かが必要なわけではありません

例として、先ほどの会話から主張以外のすべての要素を排除してみます。

Aさん
Aさん

どうしたら、来月までに3kg痩せられるかな?

Bさん
Bさん

バナナダイエットをするべきだよ

すごくシンプルな会話になりましたが、これでも会話として成立しています。主張さえあれば、ロジックは問いに対する答えとして機能するのです。

さて、いま判断しなければならないのは「バナナダイエットをするべきだ」という主張が正しいかどうかです。正しいと思えばAさんはバナナダイエットをするでしょうし、正しいと思えないならしないでしょう。あなたならどちらを選ぶか、考えてみてください。

「これだけでは主張以外の情報が一切ないから、決められない」と思ったかもしれません。しかし、「それでも、決めて」と言われれば、決められるでしょう。「やるか、やらないか」を選ぶだけです。2択なので、エイッと決めてみてください。できるはずです。

つまり、主張さえ示されれば、私たちはそれが正しいか(受け入れるか)を決めることができるのです。そこにどうしても他の何かが必要なわけではありません。

このように、主張の正しさは「決める」ものです。これ自体はエイッとやることなので、「考える」という作業とは別物です。ここで必要なのは決断力であって、思考力ではありません。

決めるまでに何をするか

問題は、主張の正しさを決めるまでに何をするかです。

結論を先に言うと、できることは1つしかありません。根拠を評価することです。これ以外に、ある主張の正しさを決める前にできることはありません。

これはもう、そういうものです。ある主張に関して世の中に存在する情報は、主張が正しい理由(根拠)か、そうでない情報(ノイズ)だけです。ノイズに関して何をしようと、主張の正しさに関する意思決定が変わることはありえません。できることは、根拠を評価することだけです。

ちなみに、根拠を評価することはオプション(選択肢)です。絶対に根拠を評価しなければならないわけではありません。いちいち根拠を探し、それを評価したり、誰かに説明したりするのは面倒です。最後にはエイッと決めるわけですから、根拠を評価するという面倒なプロセスをカットしてもいいでしょう。

実際、あなたがこれまで決めてきたことの中で、「決めた理由」を明確に説明できることはどれくらいあるでしょうか? そんなに多くはないはずです。私たちは多くの問いに対する答えを、根拠など評価せずに直観的に決めています。

しかし、この「直観的に決める」方法には1つの問題があります。あなたが王様である状況でしか、直観的に決めることはできません。具体的には、以下のような状況です。

  • プライベートな論点を考えているとき
  • ビジネスに関する論点を考えており、かつあなた自身が社長(厳密には、結果責任を負える立場)であるとき

このような状況では、直観的に決めた結果の責任はあなたにあります。責任があなたにあることの見返りとして、あなたは自由に決めていいわけです。

では、これ以外の状況(ビジネスに関する論点で、かつあなたは社長ではない)ではどうしたらいいのでしょうか? 私たちが知りたいのはそれです。実社会で、いきなり私たちが王様であることなど、まずありません。

また、そもそも「何でも直観的に決めればいい」という話なら、ロジカルシンキングがここまで流行るわけがありません。直観的に決めることは、赤ちゃんでもできるからです。これは私たちが生まれたときからやっていることで、特にトレーニングは不要です。

ここで、最初の話に戻ります。できることは、根拠を評価することだけです。これ以外ありません。そして、根拠を評価するためには、評価できる根拠を用意しなければなりません。これが、ロジックには根拠が必要な理由です。

ちなみに、根拠を評価したとしても、最後にエイッと決めるしかないことは変わりません。ビジネスでの「考える」という行為は、以下のように進むことが多いです。

  • 上司が論点を決める
  • 部下がロジック(主張と根拠のセット)を作る
  • 部下と上司が、ともに根拠を評価する
  • 最後に、上司が主張の正しさを決断する(場合によっては、複数の上司による多数決を行うことや、全会一致になるまで主張を調整することもある)

なぜ「妥当な根拠」が必要なのか

先に進みましょう。根拠は妥当なものである必要があります。なぜでしょうか?

まずは「妥当な根拠」という言葉の意味を定義しておきましょう。

「妥当な根拠」とは、「主張の正しさを支えられる根拠」のことです

当たり前の話ですが、根拠には「主張の正しさを支えられる根拠」と「主張の正しさを支えられない根拠」があります。根拠の価値が一律で同じなら、根拠を評価することなどできないからです。根拠であればどんなものでもOKという話にはなりません。

妥当な根拠とは、このうちの「主張の正しさを支えられる根拠」のことです。要するに、良い根拠のことだと考えてください(詳しくは後ほど説明します)。

Point

妥当な根拠:主張の正しさを支えられる根拠

ここまでの話をまとめておきましょう。あなたが王様ではない状況では、主張の正しさを根拠の妥当性を評価して決めます。妥当な根拠が構築されていれば主張は正しく、そうでなければ主張は正しくありません。

言い換えると、根拠が評価される状況では、妥当な根拠が構築できない主張をしてはいけません。そのような主張は正しいとは考えられないからです。最終的に正しい主張を見つけることが私たちのゴールである以上、妥当な根拠とセットでしか、主張はできないのです。これが、妥当な根拠が必要な理由です。

どんな根拠が妥当なのか

では、どんな根拠が妥当なのでしょう?

結論を先にいうと、以下の3つのポイントを押さえた根拠が、妥当な根拠です。

  1. 客観的である(目に見えること/耳に聞こえることに基ている)
  2. 普遍的である(偶然の偏りの影響を受けていない)
  3. 網羅的である(考えるべきことをすべて考えている)

ここを詳しく説明するといよいよ終わらなくなる、というより、狭義のロジカルシンキングとは、ここ(どういう根拠が妥当なのか、それはどうしたら構築できるか)を学ぶ学問です。以下のリンクですべてが学べますので、このエントリーを読み終えた後に参考にしてください。

ここでは、「なぜ、Bさんの根拠は妥当ではないのか」を解説することに留めます。

まずは、先ほどの会話(主張を前に出したバージョン)を見てみましょう。

Aさん
Aさん

どうしたら、来月までに3kg痩せられるかな?

Bさん
Bさん

バナナダイエットをするべきだよ。このあいだ、テレビで見たんだ。日曜日の9時からやってる番組なんだけど、面白くて毎週見てるんだ。

このロジックにはノイズがあるので、ノイズを削り、主張と根拠の関係を分かりやすくしてみます。

Aさん
Aさん

どうしたら、来月までに3kg痩せられるかな?

Bさん
Bさん

バナナダイエットをするべきだよ。このあいだ、面白くて毎週見てるテレビ番組でオススメされていたよ。

主張が「バナナダイエットをするべきだ」であることは先ほど説明したとおりです。では、この主張の根拠は何かというと、「①バナナダイエットがいいとテレビで言っていた」です。また、明確に示されてはいませんが、「②このテレビ番組で言っていることは正しい」という前提もあるはずです。そうでなければ①が主張に結びつかず、ロジックとして成立しません。結局、この2つの根拠をもって、Bさんは「バナナダイエットをするべきだ」という主張をしているわけです。

このうち、根拠として妥当性を欠くのは「②このテレビ番組で言っていることは正しい」です。これは主観的な意見であり、客観性がありません。この根拠で主張の正しさを支えることは難しいです。

議論をする場合

最後に、この「妥当な根拠を構築する」というポイントを、人との議論で実践するときの注意点を述べておきます。「あなたがロジックを提示する場合」と、「あなたがロジックを提示される場合」に分けて話を進めます。

あなたがロジックを提示する場合

まず、あなたがロジックを提示する場合のポイントは、主張とセットで、妥当な根拠も示すということです。これまで述べてきたことと同じですね。

ただし、1つ大事なポイントを押さえておいてください。先ほど述べた3つの条件が「妥当な根拠」として機能するのは、ロジカルシンキングのトレーニングを受けた人だけです。トレーニングを受けていない人に対して上記の根拠を用意して「だから、この主張は正しい」と主張してみたところで、効果はありません。これは見過ごされがちなポイントなので、しっかり押さえてください。

たとえば、先ほど「このテレビ番組で言っていることは正しい」という言説は根拠として妥当性がないと言いました。しかし、もしあなたが議論する相手がロジカルシンキングのトレーニングを受けておらず、「テレビで言っていることは信用できる」と思っているなら、この根拠には妥当性があるのです。

つまり、「どういう根拠が妥当なのか」は、究極的にはケースバイケースです。相手を選ばずに根拠の妥当性を押し付けても、上手くいきません。まずは相手を観察しましょう。

あなたがロジックを提示される場合

あなたがロジックを提示される場合のポイントは、主張そのものではなく、根拠の妥当性を評価するということです。

先ほど述べたとおり、「妥当な根拠が構築されていれば、その主張は正しい」というのがロジカルシンキングの基本姿勢です。つまり、ロジックにおいてあなたが注目するべきなのは根拠であって、主張ではありません。根拠が妥当なのであれば、あなたはその主張を正しいと認めるべきです。最初から主張の是非を判断してはいけません。

Point

根拠の妥当性から、主張の是非を判断する

言い換えると、ロジカルシンキングでは結論を急ぎません。むしろ、結論を保留できる力こそがロジカルシンキングの肝です。根拠を検討し、その根拠がたしかに妥当であると納得するまでは、主張の是非を決めなくてもいいのです。

簡単に言っていますが、これはとても難しいことです。普通の人であれば、まずは「主張の好き/嫌い」を直観的に判断してしまうものだからです。

インターネットの議論を見れば分かるでしょう。ほとんどの場合、「俺はお前に反対だ」といった、主張の肯定/否定だけが行われ、冷静に根拠を検討しあうような議論はまずありません。

もっと古い例では、ガリレオ・ガリレイが有名ですね。「地球が太陽の周りを周っている」という主張は、当時の支配階層には受け入れられるものではありませんでした。彼らはガリレオの提示する根拠には目もくれず、裁判という実力行使に出たわけです。このように、根拠の妥当性を冷静に評価するのは簡単なことではありません。

また、人間には確証バイアスと呼ばれる、「自分が信じたい主張を肯定する根拠ばかりを探してしまう心理的傾向」があります。これもまた、冷静に根拠を評価する際のハードルになります。

では、どうしたら根拠の妥当性を評価できるようになるか? ということですが、これはもう慣れだと思います。とにかく、主張に遭遇したら、そこから距離をとりましょう。「まだ、この主張の是非を判断しなくていい」と自分に言い聞かせてください。主張から心理的な距離をとれれば、そこから根拠を評価できるはずです。

まとめ

最後に、3つのポイントを振り返っておきましょう。

ロジカルシンキングのポイント

  1. 論点を定める→論点を書く
  2. 主張を明確にする→論点が明確になっていれば、主張は自動的に明確になる
  3. 妥当な根拠を構築する→①客観的で、②普遍的で、③網羅的な根拠を構築し、それを主張に添える

3つめのポイントに関しては説明が不十分なところがありますが、まずは「自分が主張するときは、そこに根拠を添える」、「人から主張されたときは、主張そのものではなく、根拠を評価する」というポイントを意識してください。いきなり全部できるようにはならないので、まずはここから始めましょう。

では、長いエントリーもこれでおしまいです。お疲れ様でした!

さらに学習を進めたい人は

ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました。ロジカルシンキングの学習をさらに進めたい人は、以下のエントリーに進んでください。今回学んだことの練習問題です。

また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。