選択肢を評価する/比較表の作り方【解決策のフレームワーク②】

評価のフレームワーク(表)

このエントリーでは、選択肢を評価するフレームワークを紹介します。なお、ロジカルシンキングやフレームワークについて最初から勉強したい人は、以下のリンクを参考にしてください。

では始めていきましょう。

選択肢の評価

早速ですが、以下のスライドを見てください。選択肢を評価するフレームワークをまとめてあります。

評価のフレームワーク

このように、選択肢を評価したいときには、以下のフレームワークが使えます。

評価のフレームワーク

選択肢の評価 = 評価軸 × 評価軸ごとの評価 × 価値観

論点の構造で書くと、以下のようになります。

  • 選択肢の評価:最も優れている(=選ぶべき)選択肢はどれか?
    • 評価軸:それぞれの選択肢を、どのような視点で評価するか?
    • 評価軸ごとの評価:選択肢ごとに、評価軸ごとの評価はどのようになるか?
    • 価値観:それぞれの評価軸をどのように重み付けするか?

なお、このフレームワークは「解決策のフレームワーク」とセットで使うのがオススメです。解決策のフレームワークについては以下のエントリーを参照してください。

2つを組み合わせると、論点の構造は以下のようになります。

  • 解決策として、何を行うか?
    • 解決策の洗い出し:解決策として、どんな選択肢があるか?
    • 選択肢の評価(絞り込み):どの選択肢が優れているか?(=どの選択肢を実行するか?)
      • 評価軸:それぞれの選択肢を、どのような視点で評価するか?
      • 評価軸ごとの評価:選択肢ごとに、評価軸ごとの評価はどのようになるか?
      • 価値観:それぞれの評価軸をどのように重み付けするか?

表にする

選択肢のフレームワークには、他のフレームワークにはない特徴が1つあります。このフレームワークは、テキストで論点の構造を表現するより、表で表現する方が分かりやすいです。以下のスライドを見てください。

評価のフレームワーク(表)

このように、横軸に選択肢(1列目のみ価値観)、縦軸に評価軸を持つ表を作ることで、このフレームワークの論点はすべてカバーできます1。パソコンや携帯電話の比較表はこの形で作られているので、あなたも一度は見たことがあるでしょう。ただし、そのような比較表は万人向けに作られているので、価値観の列はありません。

多くのフレームワークはテキスト(論点の構造)でしか表現できませんが、このケースのように、図表で表現することが可能なフレームワークも例外的に存在します。その場合は図表で表現した方が分かりやすくなるので、そちらを使うのがオススメです。今回も、これ以降は表という表現形式を採用します。

評価のフレームワークの用例:部活の選択

では早速、使用例を見ていきましょう。ここでは、誰もが一度は経験しているであろう、部活の選択を例にしてみます。

Example

あなたは今日、ユーラシア高校に入学した。ユーラシア高校では、1年生は必ず部活に所属しなければならないルールになっている。評価のフレームワークを使って、どの部活に入部するべきか考えなさい。

まずは論点の構造を書いてみましょう。

  • どの部活に所属するか?
    • 解決策の洗い出し:ユーラシア高校には、どんな部活があるか?
    • 選択肢の評価(絞り込み):どの部活が自分にとって望ましいか?(=どの部に入部するか?)
      • 評価軸:それぞれの部活を、どのような視点で評価するか?
      • 評価軸ごとの評価:部活ごとに、評価軸ごとの評価はどのようになるか?
      • 価値観:それぞれの評価軸をどのように重み付けするか?

この論点の構造に従って、作業を進めていきます。

STEP1:最終的に作りたい表のイメージを作る

最初に、最後に見たいものを作成します。ここがキーポイントです。

フレームワークに従えば、最初に表の枠組みを作れます。ということで、実際に作ってしまいましょう。続きを読む前に、最終的な表がどのような形になるか、あなた自身でも想像してみてください。

比較表のイメージ

この段階では「横軸に部活の種類、縦軸に評価軸が入る」ことが分かっていれば十分ですが、それを明確にするためにも、いくつか具体的な内容を書き込んでしまうのがオススメです。また、最後の行に加えている「総合評価」に関しては、後ほど説明します。

この「最後に見たいもののイメージを、最初に作る」というのは、このフレームワークに限らず、とても重要なことです。ゴールがなければ、作業は的を得ないものになってしまうからです。今回のケースでも、情報収集のために人に質問しようにも、最終的な成果物のイメージがなければ、そもそも何を質問すべきなのかが分かりません。

もちろん、作業を進める過程で「このイメージではダメだ」ということになれば、イメージを作り直すことは問題ありません。とにかく、個々の作業をする際には、「最後に何を作るために、その作業をしているのか」を念頭に置くようにしましょう。

Point

最後に見たいものを、最初に作る

枠組みができたら、あとは作業をして表を埋めていくだけです。先へ進みましょう。

STEP2:横軸(選択肢)を埋める

次に、横軸を埋めます。具体的には、選択肢の幅出しをするということです。ユーラシア高校には、どんな部活があるでしょうか?

今回のケースでは、この論点を考える必要はありません。普通は高校から部活のリストが配布されるからです(そもそも、今回は仮想の高校のケースですが)。ということで、ユーラシア高校には以下の部活があることにしましょう。分かりやすさのために、数は少なめにしてあります。

  1. サッカー部
  2. バスケット部
  3. 美術部

これがあなたの選択肢です。早速、この選択肢を表に入れてしまいましょう。ここでは、運動系と文化系のカテゴリーも加えておきました。

比較表(横軸記入後)

なお、今回の例題(部活の選択)のように、選択肢がいきなり網羅的な形で提供されるケースは例外なので注意してください。実践でこのような比較表を作る際には、どんな選択肢を用意できるかはあなたの創造力や情報収集力で決まります。ここで漏れてしまった選択肢を選ぶことはできなくなるので、しっかり時間を使ってください。

STEP3:縦軸(評価軸)を埋める

次に、評価軸を決めます。ここからが今回学んだフレームワークの出番ですね。部活を選ぶ際のポイント(視点)には、どのようなものがあるでしょうか?

簡単に思いつきそうなポイントとしては、以下のものがあります。

  • 自分がやりたいことか
  • 拘束時間
  • 顧問の先生の評判

さて、他にはどんなポイントがあるでしょうか。先に進む前に、自分でも考えてみてください。過去に自分や周りの人がどんな基準で部活を選んだか、思い返してみるとよいでしょう。また、「部活選び ポイント」といったワードで検索をかけることも有効です。

比較表(縦軸記入済み)

他にも、以下のような評価軸がありえますが、あまり軸の数が多くなっても分かりにくいので今回は割愛しています。

  • 費用(部費や、機材にかかるもの)
  • 学校内でのヒエラルキー
  • 社会に出ても役に立つスキルが身につくか
  • 拘束時間の部分も、「夏休み・冬休み中の活動」も加え、年間トータルの拘束時間を見積もった方が確実

また、評価軸に「その他」を入れておくと、評価軸以外の視点が出てきたときにフォローできます。とりあえず入れておくとよいでしょう。

なお、ここも選択肢と同じで、本番では、とりあえず評価軸はできるだけ多く出すべきです。この後に説明しますが、不要な評価軸は価値観による重み付けで切り捨てるので、この段階で評価軸が多いことは問題ではありません。むしろ、怖いのは重要な評価軸が漏れてしまうことです。私見ですが、今回の例では「レギュラーになれそうか」という軸は重要なわりに見落とされやすいのではないかと思います。

評価軸が出せない場合にどうするか

ただし、今回のケースのように、綺麗に評価軸を切り出せるとは限りません。むしろ、最初は評価軸が出せないケースの方が多いでしょう。これには2つの理由があります。

第一に、慣れるまでは、軸を切り出すことは難しいです。これはもう、どうしようもありません。この場合の対策はシンプルで、まずは「メリット」、「デメリット」といったざっくりした評価軸だけ書いておき、次のステップ(評価する)に進んでください。評価を書く中で何度も出てくる単語があれば、それを評価軸として括りだせばOKです。

第二に、経験がない領域では、評価軸は分かりません。たとえば、プログラミングを一度もやったことがない人がプログラミング学習法の比較表を作成しようとしても、そもそも評価軸が分からないでしょう。今回は「部活の選択」という、多くの人が経験している状況設定なので、評価軸を出すのは簡単なように思えるだけです。

経験がない領域で比較表を作る場合は、以下のような方法で評価軸を探すことになります。

  • 自分で一通り経験する
  • 検索する
  • 専門家(経験者)に質問する

この中で最もオススメなのは、さっと自分で一通り経験することです。納得感・説得力が違いますからね。ただし、時間や費用の関係でこれができないこともあるので、その場合は他の方法を使ってください。

STEP4:表を埋める(評価する)

話を戻して、先に進みましょう。評価軸が決まったので、実際に評価をします。各部活を先ほど出した評価軸に従って評価すると、どのような結果になるでしょうか?

ここでは質問や観察といった調査を通じて、できるだけ客観的な評価をすることが求められます。以下のエントリーも参考にしてください。

ただし、今回のケースもそうですが、すべてを客観的に評価しきることは難しいです。評価すること自体が最終ゴールではないので、どこかで諦めて先に進むことも重要だということは覚えておいてください。

では、あなたは友達や先輩から情報収集し、評価を終えたとしましょう。表を埋めた結果、以下のようになりました。

比較表(評価記入済み)

ここでのポイントは2つあります。

まず、スタンスをとって評価しましょう。具体的には、「◯・△・✕」か、数字のどちらかを書き込むということです。評価として使えるのは、このどちらかしかありません(「◯・△・✕」に「◎」を加えたり、「良い/悪い」などの表現に変えるのはOKです)。

このような比較表でよく見かけるのは、「テキストのコメントだけが書いてあって、評価が分からない」というものです。これでは意思決定に使えませんし、人に見せるために表を作っているなら、評価から逃げたような印象を与えてしまいます。必ず評価を書き込んでください。

もちろん、評価が間違っている可能性はあります。しかし、評価とセットで、評価の根拠も書いておけば問題ありません。あとは議論すればいいのです。

次に、個々の評価軸の評価が終わったら、選択肢そのものを評価しましょう。このケースで言えば、「要するに、サッカー部はどんな人が選ぶべき部活なのか?」という論点を考えるということです(バスケット部と美術部も同様)。それが一番下の「総合評価」の行に書いてあることです。

比較表を作っていると忘れがちになるのですが、私たちが最後に決めるのは「どの選択肢を選ぶか」です。個々の評価は、それを決めるためのインプットでしかありません。個々の評価に夢中になって、「どの選択肢が、どんな人にオススメなのか」が曖昧なままでは本末転倒です。この落とし穴に落ちないよう、注意してください。

STEP5:価値観を明らかにする(評価軸に重みをつける)

最後に、価値観を明らかにします。表に提示された評価軸の中で、あなたはどれを重視しますか?

これが分かれば、選ぶべき選択肢はおのずと決まります。たとえば、どうしてもやりたいことを部活でやることを重視するなら、バスケット部を選ぶべきです。高校では勉強を頑張りたいから、部活はとにかく拘束時間の短いものを選びたいということなら美術部でしょう。ここで太字にしているのが、具体的な価値観の例です。

参考までに、価値観の列を埋めた表の完成形を掲載しておきます。

比較表(完成形)

ただし、実際にここまで細かい価値観を設定できることは稀でしょう。価値観というのは「要するに、重要なのはこれだ」という類の、非常にざっくりしたものになりがちです。よって、本番の意思決定では、重要な評価軸は1つか、せいぜい2つくらいに絞り込まれることが多いです。実際、あなたが部活を決めたときに、こんなに細かくは考えなかったはずです。「これがしたいから」、「拘束時間が短い部活がいい」といった、少数の評価軸だけで意思決定したのではないでしょうか。

このように、最終的に重要な評価軸は価値観によって絞り込まれるので、STEP4と5は順序を入れ替えても構いませんし、可能であればそうすべきです。価値観が先に分かれば、重要な評価軸だけ評価することで、トータルの作業量を減らせるからです。

しかし、実務でこのような比較表を作るときは「自分以外の誰かのために表を作る。かつ、その人に会うことは難しく、価値観は分からない」ことが多々あり、なかなか理想どおりには行かないというのが私の実感です。

また、表を作らせる側の視点に立つと、先に価値観を伝えてしまうと、都合のいい意思決定になるように評価が歪められるリスクがあるのです。あなたが表を作らせる側の人間であるなら、たとえ自分の価値観が明らかだとしても、それを伝えるべきかは慎重に検討するべきです。

価値観が分からない場合

さて、ここで一つのことを考えてみてください。普通は、中学のときより高校のときの方が上手く部活を選べます。これはなぜでしょう?

答えはシンプルで、中学での経験を通じて、部活の選択に対する価値観が形成されているからです。部活を選ぶ際のポイント(評価軸)や、そこで自分が何を重視すべきか(価値観)を、中学での実体験から分かっているわけですね。

逆に言えば、中学における部活の選択は価値観を形成しようがないため、どうしてもギャンブル的な側面が強くなります。「友達が入るから」、「流行っているスポーツだから」といった理由で部活を選び、後悔した人もいるのではないでしょうか。

このように、経験がない領域においては価値観が定まっていないため、決められなかったり、間違った意思決定をしてしまったりすることがよくあります。どうしたらよいのでしょう?

私の知る限りでは、これはどうしようもありません。どうしても決める必要があるわけではないという状況なら、意思決定を保留してもいいでしょう。しかし、決めるしかないなら、たとえ価値観が定まっていなくても決めるしかありません。

現実的な対応策としては、決めた後で意思決定を変更できるオプションを持っておくことが有効です。

これの分かりやすい例は就職活動です。一度も働いたことがない状況では、労働に対して価値観を形成することは不可能です。それでも就職しないわけにはいかないですから、とりあえずどこかで働くしかありません。実際に働いてみれば、「やっぱり給料がすべてだわ」、「ここまでハードワークしたいわけじゃないな」といった、自分なりの価値観が形成されます。これを受けて、現在の職場で働き続けるか、転職などを模索するかを再び意思決定すればよいのです。

つまり、就職のケースでは「転職しようと思えばできる状況に自分をおいておくこと」が、「意思決定を変更できるオプション」になります。

部活のケースに話を戻すと、「体験入部で最低3つの部をローテーションしてから決める」、「1年ごとに転部OK」などのルールを作ることで、ギャンブル的な要素を少なくできるでしょう(現実的に導入可能なのかは分かりません)。

比較表の題材

最後に、比較表を作成する題材として面白そうなものをいくつか紹介しておきます。時間のあるときにチャレンジしてみてください(解答例はありません)。

  • 就職先
  • プログラミング学習法
  • 大人になってから始める趣味

以上、選択肢を評価するフレームワークを紹介しました。意思決定をするときには、最初に「最後に見たい比較表」が作れると、後はサクサク進むことが多いです。慣れるまでは難しいかもしれませんが、意思決定の基本スキルなので、何度も練習して身につけてくださいね。

さらに学習を進めたい人は

ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました。ロジカルシンキングの学習をさらに進めたい人は、以下のエントリーに進んでください。比較表の縦軸には必ず入れることになる、コストについて説明しています。

また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。


  1. ちなみに、軸の配置が逆(選択肢が縦軸で、評価軸が横軸)になっている表をよく見かけますが、これはオススメできません。人間の視野は横に広く、横に並んでいるものの方が瞬間的に比較できるからです。比較表を作るとき、比較したいのは選択肢であって評価軸ではありません。よって、選択肢を横軸に配置すべきです。