確証バイアスとは|確証バイアスから逃れる方法

確証バイアスとは

このエントリーでは、確証バイアスとは何か、それにどう対応すればよいかを学びましょう。

私たちが何かを考える上で、確証バイアスは最大の敵です。確証バイアスというものの存在を認識し、それにどう対応すべきかを理解しておかないと、私たちは正しく考えることができません。私たちが抱える「内なるイエスマン」と、どう付き合っていくべきかを学びましょう。

では始めていきましょう。

確証バイアスとは

まずは、「確証バイアス」とは何なのかを押さえていきましょう。以下のスライドを見てください。

確証バイアスとは

このように、確証バイアスとは、自分が既に持っている意見・信念を肯定する情報ばかりを集めようとする傾向のことです。逆に言うと、確証バイアスのせいで、人間は自分の意見・信念を否定するような情報を集めようとしません。

イメージとしては、頭の中に「あなたは正しいよ!」と連呼してくれるイエスマンがいると考えてください。このイエスマンのことを確証バイアスと呼んでいるわけです。

Keyword

確証バイアス:自分が既に持っている意見・信念を肯定する情報ばかりを集めようとする傾向

具体例:ウェイソン選択課題

具体例で確認しましょう。これは「ウェイソン選択課題」という有名なパズルです。

Question

片面には数字が書かれ、もう片面には色が塗られているカードが、以下のように置かれている。いま、「カードの片面が偶数ならば、その裏面は赤い」という仮説がある場合、この仮説を確かめるためにひっくり返すべきカードはどれか?(複数選択可)

ウェイソン選択課題

以下に解答欄がありますので、パッと思いついた答えを書いてください。もちろん、その後に冷静に考えても構いませんが、確証バイアスを理解する上では、真っ先に思いついた答えをメモしておくことが重要です。

正解は、6と青色のカードです。仮説が正しいためには、6のカードの裏は赤色、青色のカードの裏は偶数以外の数字でないといけません。

細かく解説すると、「カードの片面が偶数ならば、その裏面は赤い」という仮説が否定されるのは、「カードの片面が偶数なのに、その裏面は赤くない」カードが存在する状況です。よって、チェックすべきなのは偶数が見えているカードと、赤ではない色が見えているカードになります。

おそらく、あなたが真っ先に思いついた答えは、6と赤色のカードだったのではないでしょうか。少なくとも、実験結果としてはこの間違いを犯す人が多いです。

しかし、これは間違いです。たとえ赤色のカードの裏が奇数や小数であっても、これは「カードの片面が偶数ならば、その裏面は赤い」という仮説に矛盾しません。

では、なぜあなたが赤色のカードをチェックしたくなったのかと言えば、「赤色の裏が偶数なら、仮説が肯定されるから」ですよね。というより、こんなことを意識すらせずに、赤色のカードをチェックしたくなったのではないでしょうか。これが確証バイアスです。

確証バイアスは人類に普遍のものか

さて、あなたはパッと正しいカードが分かった可能性もあるので、確証バイアスは人類に普遍的なものなのかを考えておきましょう。

結論としては、人間は誰でも確証バイアスを持っていると考えて問題ない、というのが私の意見です。

理由は3つあります。

まず、確証バイアスの普遍性は、心理学者の間では当然のものとされているように見受けられます1。少なくとも私の調べた限りでは、確証バイアスの普遍性を疑っている心理学者は見当たりません。手元にある心理学の教科書にはすべて確証バイアスが記載されていますし、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者であるダニエル・カーネマンの著書にも、以下の記述が見つかります。

連想記憶の働きは、一般的な「確証バイアス(confirmation bias)」を助長する。サムが親切だと思っている人は、「サムって親切?」と訊かれればサムに親切にしてもらった例をあれこれと思い出すが、「サムっていじわるだよね?」と訊かれたときはあまり思い浮かばない。

次に、これは私の仮説に過ぎませんが、人間が確証バイアスを持っていることは進化心理学的に説明がつく気がします。

人間が「考える(=疑う)」という技術を獲得したのは、長めに見積もってもせいぜいここ3000年くらいの話です(アリストテレスの誕生が紀元前384年)。

それ以前の数万年間は、「信じる」能力の高い個体が生き残る淘汰圧が人類にかかったのではないでしょうか。家族の絆のような、目に見えないものを「信じる」能力が高い個体同士が共同体(集団)を形成し、それを持たない個体との殺し合い(戦争)に勝つからです。そして、「信じる」能力の基盤として、確証バイアスはしっくりきます。

最後に、私の観察する範囲では、確証バイアスを持っていない人は存在しません。私も、ウェイソン選択課題を知っており、「パッと思いつく答えは間違いだ」ということを知っているにも関わらず、どういうわけか赤いカードをめくりたくなります。また、科学者の起こす事件や、SNSでの議論を見る限り、当人の知性レベルに関わらず、誰もが確証バイアスに囚われているように見受けられます2

根本的には、人間は認知したもの(見たもの、聞いたもの、言葉にされたもの)に引っ張られるということではないかと思います。ウェイソン選択課題でも、仮説の中に「赤」という言葉があるから、それに引っ張られてしまうんですよね。万有引力の法則は、抽象概念のレベルでも成立するのではないでしょうか。

まあ、この話を掘り下げても答えは出ないので、このあたりでやめておきます。話を進めるため、以降は「人間は誰でも確証バイアスを持っている」ということを前提にしますので、ご了承ください。

Point

人間は誰でも確証バイアスを持っている(と仮定して問題なさそう)

なぜ確証バイアスが恐ろしいのか

冒頭で、「私たちが何かを考える上で、確証バイアスは最大の敵だ」と述べました。その理由を確認しましょう。もう一度、先ほどのスライドを見てください。

確証バイアスとは

怖いのは、たとえ右側のような世界を認知しているとしても、それは「客観的である」と言えてしまうことです。何らかの情報を知覚していることに変わりはないわけですからね。「こういうデータがあった」、「あの人もこう言っていた」といった、自分の外にある情報を集めながら、自分のことを主観的だと思う人はいないでしょう。

では、そのような認知から導かれる主張が正しいのかと言えば、そうではないことは明らかです。最初から、見たいものしか見ていないわけですからね。客観性はあるのかもしれませんが、明らかに普遍性を欠いています。

なお、「客観的である」、「普遍的である」という言葉については、以下のリンクも参考にしてください。

まとめると、「自分には確証バイアスがある」と意識していないと、客観的に考えたつもりで、間違った主張に至ってしまうということです。

Point

確証バイアスを意識しないと、客観的に考えたつもりで、間違えることになる

そして、先述のとおり、この落とし穴はすべての人間に標準装備されています。

要するに、私たちの目は最初から曇っているわけですね。

残念ですが、これを受け入れるしかありません。あなたの目も、私の目も曇っています。ということで、ここからは曇った目との付き合い方を考えていきましょう。

確証バイアスへの対策

確証バイアスへの対策として、以下の2つが考えられます。

  1. 反対意見を探す
  2. 試す

順に説明します。

確証バイアス対策①:反対意見を探す

確証バイアス対策その①は、反対意見を探すことです。

先述のとおり、私たちの目は曇っていますが、どのように曇っているかは分かっています。自分が既に持っている意見・信念を否定する情報が見えなくなるように曇るわけですね。

確証バイアスとは

だったら、そこをよく見ようとするしかありません。具体的には、自分とは反対の意見を探せばいいわけです。確証バイアスの存在を意識して、積極的に反対意見を求めるのです。

具体的には、以下のような方法があります。

  • 自分の仮説は反証によって検証する
  • 様々なメディアに触れる
    • 定期的に、普段は読まないメディアを読む
  • SNSで、自分とは異なる意見を言う人とだけ繋がる
    • 実名でやると変な誤解をされかねないので、匿名アカウントがよさそうですね

このような行動を通じて、自分の中にある確証バイアスや偏見に意識的になれるでしょう。

ただ、率直に言って、「自分で、自分の反対意見を探す」という対策には限界があると私は考えています。

私の解釈では、確証バイアスはそんなに甘いものではありません。「お腹が減ったらご飯が食べたくなる」のと同じくらいのレベルで、私たちは確証バイアスに囚われています。自分一人で物事の両面をフェアに眺めるのは不可能だと考えるべきでしょう。

悪魔の代弁者

そこで「悪魔の代弁者」の出番です。悪魔の代弁者とは、「わざと反対意見を述べる人」のことです。もともとはカトリック教会の列聖調査審問検事(この人が、候補者の至らぬ点を調査していた)のことだったのですが、それが転じてこのような意味になりました。

1つの(1ペアの)目が曇っているなら、もう1つ、別の場所が曇っている目を用意すればいいですよね。これが悪魔の代弁者のコンセプトです。

悪魔の代弁者は、キューバ危機の際にケネディ大統領が意思決定プロセスに採用したことで知られています。

侵攻が失敗した後、ケネディ大統領は外交政策に関する意思決定プロセスを見直し、いくつかの重要な改善を行った。

(中略)

第五に、大統領の最も近しい腹心である弟のロバート・ケネディとセオドア・ソレンセンの二人に、この意思決定プロセスでの「悪魔の代弁者」の役割を与えた。ケネディは、二人にそれぞれの提案の弱点とリスクを見分け、重要な前提条件を残らず洗い出して、徹底的に分析させた。

このように、本当に大きな意思決定をする際には、自分の頭を過信せず、悪魔の代弁者を用意した方が安全でしょう。

もちろん、悪魔の代弁者は大きなコストがかかるため、どんな場合でも使えるわけではありません。というより、ほとんどのケースでここまでやるのは現実的ではないでしょう。しかし、意思決定の精度を高める方法としてこういうやり方があることは、覚えておいて損はないはずです。

確証バイアス対策②:試す

2つめの対策は、実際に試すことです。まずは具体例を見てください。

Aさん
Aさん

これからは果物ダイエットだ! これで間違いなく、俺のダイエットは成功する!

Bさん
Bさん

御託はいいから、やってみなよ。3ヶ月後に体重が減っていて、体調にも問題がないなら、それでいいじゃないか。

(3ヶ月後)

Aさん
Aさん

ダメだったわ。以前の発言は忘れてくれ。

このように、考えるのをやめて、実行に移すわけです。あなたの持っている意見・信念が「Xすれば上手くいく」といった類の、行動することで検証可能なものであるなら、こうすることで明確な結論が出せます。

ダイエットの他には、以下のようなものが例として挙げられます。

  • 「あの人は、自分のことが好きなはず」 → 実際に告白して、結果でチェック
  • 「Xという勉強法で、成績が上がるはず」 → 実際にその勉強法で一定期間勉強して、テストの点数でチェック
  • 「Xという事業は必ず当たる」 → 事業を開始して、一定期間後の売上でチェック

基本的に、行動することで検証可能な意見や信念は、このやり方でケリをつけてしまうのがよいでしょう。白黒がハッキリしますからね。

厳密には、これは確証バイアス対策というより「考えることの限界を受け入れる」と呼ぶべきものかもしれません。以下のリンクも参考にしてください。

ただし、この対策を行う上での注意点がいくつかあるので、それもセットで覚えてください。以下のとおりです。

  1. 結果は数値で計測する
  2. 小さく賭ける
  3. 一般論に拡大解釈しない

順に説明します。

注意点①:結果は数値で計測する

まず、行動の結果はできるだけ数値で計測するべきです。ダイエットなら体重、勉強法ならテストの点数を見ましょう。

理由はシンプルで、数字は嘘をつかないからです。たとえば、ある程度の時間が経っても体重が1kgも減っていないなら、「自分のダイエット法は間違っている」と認めるしかないですよね。数字すら否定するなら、それはもう確証バイアスを超えて、オカルトの世界です。

なお、数値を計測する際、あなたが行動前に持っていた意見・信念が正しかったのかを判定する方法は、行動前に決めておくべきです。具体的には、以下の要素を行動前に考えてください。

  • 何の数字を見るか
  • どのタイミングで見るか
  • 成否の判断をする値はいくつか

こうする理由は、サンクコストバイアスがあるからです。残念なニュースですが、行動を開始すると、私たちは確証バイアスとは別に、サンクコストバイアスというバイアスに囚われます。バイアスまみれですね。

サンクコストバイアスとは、「投資したコストによって、対象の価値が自分の中で上がってしまうバイアス」のことです。以下のスライドで確認してください。

サンクコストの呪い

サンクコストバイアスのせいで、行動後に私たちの判断基準は甘くなります(行動を正当化するバイアスがかかる)。これを回避するためにも、判断基準は行動前に決めておくとよいでしょう。

サンクコストバイアスについては以下のリンクで詳しく解説しているので、こちらも参考にしてください。

注意点②:小さく賭ける(ウーチングする)

次に、行動にかけるコストは小さく抑えるべきです。小さく賭けるわけですね。

これも理由はシンプルで、大きく賭けてしまうと、後に引けなくなるからです。

この「試す」という対策の本質は、「試せば分かることを延々と考えるのは時間のムダだ。試して白黒をつけよう」ということです。しかし、後に引けないほど大きく賭けてしまえば、黒だと分かっても後に引けないわけですから、試していることになりません。あくまで、ダメだと分かったときに撤退できる範囲で行動する必要があるのです。

逆に言うと、いきなり多大なコストをかけないと検証できないような意見・信念には、「試す」という対策は使えません。たとえば、企業買収(「私たちがA社を買収すれば、もっと上手く経営できる」)などがこれに該当します。

余談ですが、小さな行動(実験)によって自分の意見・信念を検証することを英語では「ウーチング」と呼ぶそうです。

ウーチングとは、小さな実験を行なって自分の仮説を検証することだ。

ただ、「ウーチング」という言葉は日本では流行っていないし、これからも流行らないと私は睨んでいます。理由は説明しません笑。

注意点③:一般論に拡大解釈をしない

最後に、たとえ試して上手くいったとしても、それを一般論に拡大解釈する際には注意が必要です

具体例を見てみましょう。たとえば、果物ダイエットを実行して、実際に上手く行ったとします。

Aさん
Aさん

果物ダイエットの結果、1ヶ月で3kgの減量に成功したよ。このダイエットなら、誰でも簡単に減量できるはずだ。

Bさん
Bさん

それは言い過ぎだろう。単に、君が成功したという事例があるだけじゃないか。

このように、「自分が上手くいった」というのは、1つの成功事例でしかありません。統計用語で言うところのnが1しかないわけで、ここから一般論を導くのは無理があります。

つまり、自分の成功体験というのは、そこから一般論を導けるほどの普遍性はないのです。ここを理解せずに、自分の成功体験だけから過剰な一般論を導いて、それを世間に発表しようものなら、下手をすると炎上するリスクがあります。注意してください。

Point

自分の成功体験が万人に当てはまるとは限らない

ただ、「自分の成功体験に基づいて人にオススメしてはいけない」なんて考え方は窮屈すぎますし、実態として世の中は成功体験に基づいたアドバイスに溢れていますよね。節度を守ってさえいれば、自分の成功体験を他者にシェアすることは何の問題もないというのが私の意見です。

具体的には、以下のようなやり方が考えられます。

  • 「自分はこれで上手くいった。あなたにも上手くいくかは分からないけど、とりあえず伝えたい」と最初に明示する
    • 個人的には、これで十分だと思います。あとは受け手の自己責任でしょう
  • 成功体験以外に、メカニズムやエビデンスといった別の根拠を添える

現代はSNSなどであらゆる言論が厳しくチェックされる時代です。成功体験は自分の内に留めておくか、発表するなら上記の点に注意してください。

以上、確証バイアスとその対策について説明しました。このバイアスはロジカルシンキングの天敵とも言えるものですので、しっかりその存在を認識して、落とし穴に落ちないよう注意してください。

では、これでロジカルシンキングの基礎知識は一通り押さえられたので、ここから実践に移りましょう。次のエントリーでは、実践におけるロジカルシンキングの進め方を説明します。

また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。

参考文献

ウェブサイト

書籍


  1. ただし、「マズローの欲求ピラミッド」のように、実は一個人の仮説でしかない理論が、あたかも真理であるかのように普及してしまった事例もあるので、専門家の言うことを何でも信用すればいいわけではありません。 

  2. ただし、このような観察が私の確証バイアスの結果である可能性も否定できません(こうやって考えていくと泥沼なので、どこかで諦めることも必要ですね)。