論点の分解が「正しい」とは

論点の分解

このエントリーでは、論点の分解を掘り下げていきましょう。先にこちらのエントリーを読んでおいてください。

では始めていきましょう。

論点の分解の重要性

前回のエントリーで述べたことは、以下の3点に集約できます。

  1. 妥当な根拠を構築するための3つめの条件として、根拠の網羅性を担保する必要がある
  2. 根拠の網羅性を担保するには、論点を網羅的に(すべての小論点に答えれば大論点に対する答えが出るように)分解すればよい
  3. どんな根拠が網羅的であるかは、主観的に決まることである

ここから、論点の分解がロジカルシンキングにおけるキーポイントだと言えます。

ポイント①と②から、妥当な根拠を構築するためには、網羅的に論点を分解することが不可欠であることが分かります。一方で、ポイント③があるため、個々の論点に対してどんな分解が正解なのかは、一概に言い切れないのです。

つまり、論点の分解は重要で避けられないのですが、どうやればいいのかハッキリしません

ということは、ここが差がつくポイントだということです。重要なことであっても、やり方が分かっていれば、人によって大きな差はつきません。しかし、論点の分解はそれができないのです。その結果、ここはどうしても個人差が出やすくなります。何度も論点の分解を繰り返す中で、あなたなりのやり方を模索するしかありません。

Point

論点の分解がロジカルシンキングにおけるキーポイントである

どうすれば論点の分解が上手くなるのか

では、どうすれば論点の分解が上手くなるのでしょう?

最も大切なことは、何度も論点を分解することです。やらないことには上手くなりません。

言い換えると、大論点が決まったら、すぐに思考や知覚に移るのではなく、「何を、どういう順序で考えればいいか」を考えましょう。具体的なやり方は今後のエントリーで詳しく説明しますが、とにかく「論点の分解をする」という意識を持つことが必要です。

Point

論点の分解が上手くなりたいなら、何度も論点の分解をするしかない

しかし、闇雲に論点を分解していればそのうち上手くなるのかというと、そういう話でもありません。自分の分解が上手くいったのかをチェックする視点がなければ、改善のしようがないからです。つまり、「正しい」論点の分解(=どういう論点の分解が望ましいか)を知っておく必要があるわけです。

ということで、早速それを勉強しましょう。

論点の分解が「正しい」とは

早速ですが結論を見てください。以下のスライドにまとめてあります。

論点の分解

結論を最初に言うと、問題解決につながる分解が、正しい論点の分解です

キーポイントは以下のとおりです。

  • 問題解決につながる分解が、正しい論点の分解である
    • 分解が網羅的であることはあくまで前提条件で、網羅的な分解が正しい分解なわけではない
  • 分解が問題解決につながるためには、分解した論点が以下の性質を持っている必要がある
    • 分解した論点に答えが出せる
    • 答えから具体的な解決策を考えられる

ここから順に説明しますが、もしまだ「問題解決」という言葉になじみがない場合は、先に以下のリンクを読んでおいてください。問題解決とロジカルシンキングの関係について解説しています。

正しい論点の分解の前提条件:網羅的(MECE)である

まず、正しい論点の分解は、網羅的(MECE)である必要があります。

これに関しては、前回のエントリーで既に説明しています。忘れてしまった人は以下のリンクで復習しておいてください。

上記のリンクでは概念(名詞)を分解したので、論点(疑問文)を分解するケースも確認しておきましょう。たとえば、「日本の売上はいくらか?」という論点は、以下のように分解すると網羅的です。

  • 日本の売上はいくらか?
    • 北海道の売上はいくらか?
    • 本州の売上はいくらか?
    • 四国の売上はいくらか?
    • 九州の売上はいくらか?
    • 沖縄の売上はいくらか?

論点を分解するときは、網羅的に分解しなければなりません。重大な論点が漏れていれば間違った主張が出ますし、ダブりはロジックが混乱する原因になるからです。網羅的に分解できなければ、その時点でその論点の分解は間違っています。

網羅的であることは十分条件ではない

しかし、覚えてほしいのはむしろ逆のことです。網羅的に論点を分解したからといって、それが正しい分解だとは限りません。たとえ分解が網羅的であっても、それが問題解決につながらないなら意味はないのです。

言い換えると、分解が網羅的であることは分解が正しいことの必要条件(前提条件)であって、十分条件ではありません。

Point

網羅的に分解できれば正しい分解になるわけではない

正しい論点の分解の条件:問題解決につながる

ということで、こちらが本題です。正しい論点の分解は、問題解決につながります

問題解決とロジカルシンキング

論点は、問題解決につながるように分解しなければなりません。なぜ、こんな条件を満たす必要があるのでしょう?

答えを先に言っておくと、ほとんどの場合、ロジカルシンキングを使って考える理由は、問題解決をすることだからです。よって、ロジカルシンキングの一部である「論点を分解する」ということも、問題解決につながるように行わなければなりません。

具体的に説明しましょう。まず、以下の2つの論点を比較してみてください。

  1. 縄文時代の日本人の平均寿命はどれくらいか?
  2. なぜ売上が減っているのか?

この2つの論点では、考える目的が決定的に違います。

①の論点を考える目的は、「正しい答えが知りたい」ということに尽きます。この論点に対する答えが、私たちの知的好奇心以外の何かに影響を与えることは考えにくいですよね。ちなみに、検索をすると「15歳前後」という情報が見つかります(真偽のほどは定かではありません)。意外に短いですね。

では、②の論点を考える目的はどうでしょうか。これも、浅いレベルでは「正しい答えが知りたい」となります。しかし、この論点を考える真の目的は「売上を回復させる」ことです。答えを知って終わりということはありません。

つまり、②のケースでは、正しい答えを見つけるだけでは足りません。答えをもとに行動を変え、現状(この場合は売上)を変えていく必要があります。そして、実際に現状が良い方向に変化した(売上が回復した)場合、それを「問題解決した」と呼ぶのです。

要するに、②のような論点を考えるケースでは、「正しい答えを見つける」という、ロジカルシンキングの目的を達成するだけでは足りないのです。ロジカルシンキングを行った結果が、問題解決につながらなければ意味はありません。言い換えると、ロジカルシンキングは問題解決のための手段でしかないということです。

そして、一部の研究者の世界に属していない限り、①のような論点を真剣に考えることはありません。よって、ロジカルシンキングを使うケースの大半で、問題解決につながるように論点を分解しなければならないのです。

Point

ロジカルシンキングは問題解決のための手段なので、ロジカルシンキングによって出した答えが問題解決に貢献する必要がある

問題解決につながる分解とは

では、どのように論点を分解できれば、問題解決につながるのでしょう?

これを理解するためには、「網羅的ではあるが、問題解決につながらない分解」を見るのが役に立ちます。例として、以下の状況を考えてみましょう。

  • 大論点:なぜ売上が減っているのか?
  • 補足情報:この会社が扱っている商品は戸建て住宅(つまり、価格が1000万円を超える高額商品)である

このとき、大論点を以下のように分解したとします。はたしてこの分解は正しいでしょうか?

  • なぜ売上が減っているのか?
    • 午前の売上が減っているのか? だとしたらそれはなぜか?
    • 午後の売上が減っているのか? だとしたらそれはなぜか?

売上を午前と午後に分解することには、漏れもダブりもありません。つまり、この分解は網羅的です。しかし、この分解は正しくありません。このように論点を分解しても、問題解決につながらないのです。

まず、分解した論点を検証することが困難です。「何時に売上が立ったか」というデータがなければこの論点は検証できませんが、そんなデータはPOS(何がいつ売れたかを管理するシステム)が管理された小売業(例:コンビニ)でもない限り存在しません。家のように契約書を交わして購入する商品では、取れるデータは日付までが限度でしょう。データがなければ、論点を検証することはできません。

さらに、分解した論点を検証する意味がありません。百歩譲って、商談成立時刻のデータがあったとしましょう。契約書にサインした時刻を書く部分があったのです(私はそんな契約書を見たことはありませんが)。

しかし、このデータをExcelで分析にかけたとしても、価値のある示唆が出せません。

家のような高額商品を買うかどうかを決めるのは、時間のかかるプロセスです。コンビニにあるお菓子を買うように「あ、買おう」と思って買えるものではありません。となると、顧客が契約書にサインをした時間には、特に意味がありません。

売上が減っているのが事実である以上、分析をかければ、午前か午後のどちらかの売上が減っているという結果が出るでしょう。しかし、そこから「なぜ午前の売上が減ったのか」といったことを考えても、意味のある示唆は出せません。契約書にサインするタイミングでは顧客は「買う」と決めているわけで、私たちが知りたい「なぜ私たちから買わなくなったのか」、「どうしたらまた私たちから買ってくれるのか」といった情報は、そこには含まれていないのです。

トドメに、何か示唆が出たとしても、解決策がありません。仮に、百万歩ほど譲って、「午前の売上が減っている。午前に商談をセットして、そこで契約書をサインさせるべき」という示唆が出たとしましょう。しかし、この解決策は実現性がありません。商談は買い手の都合のいい時間に合わせて設定するものだからです。

問題解決をするためには、「誰が、何を、いつ、どこで、どのように、どれくらいやるのか」を具体的に記述した解決策が必要です。そして、その解決策がやりきれるものである必要もあります。この2つの条件を満たせない解決策は、結局は実行されないか、実行されても長続きしないからです。

結局、戸建て住宅のケースでは、「なぜ売上が減っているのか?」という論点を時間で分解しても、問題解決にはつながりませんでした。小論点を検証もできず、検証できたとしても意味がなく、意味があったとしても解決策が出せないからです。

つまり、この分解は網羅的ではあっても問題解決にはつながらないため、正しくなかったということです。

問題解決につながる分解の条件:まとめ

ここまでの話をひっくり返すと、問題解決につながる論点の分解の条件が見えてきます。

  • 分解した論点に答えが出せる
    • 知覚(観察やデータ分析)による検証が可能である
  • 答えを基に、具体的な解決策を考えられる

ただし、現実問題として、分解した論点がすべて上記の条件を満たすように分解できることはまずありません。分解した論点のどれか1つでも上記の条件を満たしているなら、その分解は正しいと考えていいでしょう。これが、「問題解決につながる」ということの具体的な意味です。もう一度、冒頭のスライドを確認してください。

論点の分解

ちなみに、ある分解が問題解決につながるかは、事前には分からないことも多いです。先ほどは間違っていることが明らかな例を使いましたが、実際には「イケる」と思った論点の分解が機能しないことはよくあります。検証しようとしたらデータがないことや、分析をかけてもつまらない結果しか出ないことは珍しくないので、ガッカリしないでください。

つまり、論点の分解が正しかったかは、事後的にしか分かりません。分解して、検証作業をしてみてやっとこさアタリかハズレか分かるのです。もちろん、事前にアタリの確率が高そうな分解を見極める目を持つことは重要ですが、あまり分解に悩んだり時間をかけたりするくらいなら、さっさと検証作業をした方がいいでしょう。特に、初心者のうちはそうです。数パターン網羅的に分解して、順番に検証しましょう。

Point

問題解決につながったかどうかで、自分の論点の分解をチェックしていけば、論点の分解が上手くなる

以上、論点の分解について説明しました。では、次回から、具体的な論点の分解方法を学んでいきましょう。まずはフレームワークからです。

また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。